海洋研究開発機構、自立型無人探査機で複数機運用に成功 海底熱水鉱床調査を効率化

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は24日、中部沖縄トラフの海底熱水鉱床賦存域での調査航行において、自立型無人探査機(AUV)の複数機運用による海底下構造調査に世界で初めて成功したと発表した。従来の曳航体による調査と比較して航行速度が2倍に向上するほか、側線から側線への移動時間を大幅に短縮できるなど調査の効率化が図れることも実証した。

 同調査では、設定した側線に沿って電流源を搭載したAUV「じんべい」が先行し、受信機を搭載したAUV「ゆめいるか」がその後ろを追いかけるように運用した。海底広域研究船「かいめい」が「じんべい」を、洋上中継器(ASV)が「ゆめいるか」を監視し、AUV2機間の距離を適切に調査しながら潜航調査を行った。その結果、熱水鉱床の存在と関連付けられる低比抵抗域と自然電位の負の異常域を検出することに成功した。

 今回の調査では、作業時間やAUVのバッテリー容量の制限から実質的な潜航時間が4時間程度に制限されたが、今後はAUVのバッテリー容量の拡大やAUVとASVの着揚収作業性の向上により、越夜でのオペレーションが可能となれば観測時間が5~6倍に増えるため、飛躍的に効率の良い観測が可能になる。今回はAUV間の距離の制御をオペレーターの指示で行ったが、AIなどを用いた制御が可能となることで、より正確な位置制御も可能になる。また、複数機の受信AUVを用いることが可能となれば、調査可能な深さをより自在に変えたり、3次元的なデータを取るなど調査の自由度を飛躍的に高められると期待されている。

 JAMSTECは、これまで曳航体から200メートル程度の電極アレイケーブルを曳航し、そこから電流を送信し、海底下から信号を受信する技術の確立で成果をあげてきた。曳航体による観測は、仕組みが比較的簡単でリアルタイムでのデータ確認も可能であるなどメリットも多いが、長い電極アレイケーブルを曳航するため、観測側線の方向を変える際に大きな時間ロスが生じるという課題もあった。

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