晴れて公道で新型センチュリーに乗った!
トヨタの最高級車である新型センチュリーには、既に東京・台場の巨大ショールーム「MEGA WEB(メガウェブ)」内にあるライドワンという限られた条件でこそ試乗している。
だがやはり自動車評論家と言えども一般道を乗ってみないと詳しい試乗レポートなど書けない・・・ということで、改めて新型センチュリーをジックリとチェックしてみた。果たしていかに?
VIPのために仕立てられたパワーユニット
さっそく新型センチュリーの運転席に座ると、案外「普通」である。
考えてみたらセンチュリーはリアシートに座るためのクルマだからして、運転席は重視されない。
質感含め、大雑把に言って運転席回りはマークX以上クラウン以下、といった感じ。新型センチュリーを「自分で運転するためのマイカーにしよう」と言う人などいないと、トヨタは割り切っているのだろう。
いざ、新型センチュリーのDレンジをセレクトして走り出す。
パワーユニットの基本は旧型のレクサスLS600hと同じ。381馬力のV8の5000cc+モーターというトヨタ式のハイブリッドだ。プリウスと同じく動き出しのタイヤ2~3ころがりまでモーター。そこからエンジン始動し、モーター+エンジンで走るというもの。
プリウスと違うのは圧倒的にパワフルだということ。アクセル全開を続けモーターアシストが無くなっても381馬力だ。通常の状態ならシステム出力で431馬力もあり、ひとたびアクセルを踏み込めばV8エンジンの豪華なビートを伴い傲然とダッシュする!やはりVIPカーたるもの、万一の逃げ足も必要。
一方、通常の速度域で走っている時は圧倒的に静か。リアシートに座っていると、パワーユニットからの音が”ほぼ”聞こえないから素晴らしい。アクセル操作に対してのレスポンスも精密にコントロール出来るため、上手なドライバーなら加減速Gを極めて滑らかに出せることだろう。
ドライバーは高度な腕とプロ意識が必要!?
運転していて気になったのは「少し柔らか過ぎますね」というダンパーの減衰力設定。おそらく減衰力出すとバタバタした乗り心地になるためだろう。結果として車全体が徹底的に良く動く。外から見ていたら1950年代のアメ車の如く、アクセル踏めばノーズ上がり、ブレーキ踏むとノーズダイブする。美しくないです。
ロールスロイスやベントレーは、車体がこんなに動かない。後ろに座った場合、車体の挙動までコントロール出来る運転の上手なドライバーならあまり問題無いけれど、通常レベルだとクルマ酔いする人だって出てくるかも。今のままの乗り心地で減衰力を上げたらもっと良くなると思う。
もう一つ気になったのが運転席シート。最近のトヨタ車の中でも、イマイチの形状だと思う。解りやすく言えば「疲れる」。リラックス出来ず、私だと「腰痛くなる」。おそらく「このクルマを運転するときは人から見られる。背中をピンと張って運転してくださいね」ということなんだろう。
以上、新型センチュリーにとってあまり重要度の高くない運転席からのレポートでした。
リアシートの快適性と格や雰囲気はさすが我が国のフラッグシップ
さて、肝心のリアシートやいかに?
リアシートは革とモケットの2タイプが設定されているが、試乗車は後者でした。ちなみに天皇陛下の御料車もモケットであります。馬車の時代からキャビンはモケットの方が高級とされているのだった。
柔らかいモケットのリアシートに座ると、まぁ快適!
走っても静かだし乗り心地良いし1席ずつ好みの温度に調整出来るし、オーディオだって素晴らしい音で鳴る。アルファードのセカンドシートも広いけれど文明の色が濃い。センチュリーだと文字じゃ表せないような「格」や「雰囲気」に代表される文化を感じます。
そういった雰囲気を作り出している大きな要因は、エクステリアにあるのかもしれない。デザインだけでなく徹底的な作り込みや塗装品質など、ぱっと見ただけで普通のクルマと明らかに違う。
やはりセンチュリーは我が国のフラッグシップと言って良い。約2000万円(正確には消費税込みで1,960万円!)という販売価格、私はお買い得だと考えます。
[レポート:国沢光宏/Photo:茂呂 幸正]