総裁選の「地方対策」

 風に頼るしかない、と当時の本紙はその人の戦いに厳しい見方を示している。17年前、自民党総裁選に立った小泉純一郎氏は、国会議員の中にこれという組織票を持たず、地方票を当て込む以外になかった。勝ち目なんて、と初めのうちは思われていたが▲党員・党友の心をがっちりつかんで予備選の地方票で圧倒し、国会議員の投票でも雪崩現象が起きた。来月の党総裁選に立つ石破茂氏は、この劇的な場面のように地方を動かす決意という▲先ごろ出馬表明した安倍晋三首相(党総裁)との一騎打ちになる。「安倍1強」の下で、首相は議員の組織票の多くを握っているとされる。かたや石破氏は6年前の総裁選で、地方票に限れば首相にダブルスコアの差をつけた実績がある▲この選挙でも地方票を当てにするが、首相の側もそつがない。出馬表明の前から、27都府県での支援集会をセッティングしていた。首相公邸に自民党の地方議員を招く「接待」も重ねてきたという▲選挙戦術としての「地方対策」は万全らしいが、地方にどう活力をもたらすかという、政策や政治姿勢としての「地方対策」はさて、どうか▲巨大与党のトップ選びは、党員に限らず日本の隅々から国民が注視している。重んじられるべきは地方で集める票だけでなく、地方の未来のはずだろう。(徹)

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