【女子W杯】洞察力、配球、強肩、決勝打…日本を決勝に導いた捕手・船越を支える「余裕」

攻守に渡って活躍した侍ジャパン女子代表・船越千紘【写真:Getty Images】

兄は広島の船越涼太、2大会連続のW杯出場「あの時の経験があるので」

「第8回WBSC 女子野球ワールドカップ」(米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表は29日(日本時間30日)、スーパーラウンド第2戦でチャイニーズ・タイペイを2-1で破り、決勝進出一番乗りを果たした。

 攻守でキーマンになったのは、船越千紘捕手(平成国際大)だ。守ってはピンチでスクイズを見破り、打っては逆転打を放った。

 洞察力でピンチを救った。先制点を許した直後、なおも1死三塁の場面。初球ストライクを取った後「バッターがランナーを見ていたので何かあるかなと思って」と外角に外した。スクイズは空振りとなり、三走を挟殺プレーでアウトにし、この回最小失点で切り抜けた。

 その後も3回2死満塁、4回1死二塁、9回2死一、二塁と走者を背負った投手陣を引っ張り、清水美佑投手(アサヒトラスト)、水流麻夏投手(レイア)の1失点リレーをサポートした。

「緊張して眠れなかった」と話していた前日のアメリカ戦同様に、この日も重圧と戦っていた。決勝進出に王手をかけて臨んだ試合。「今日を落とすと、次が苦しくなる。2-1だったので、後半になればなるほど、重圧を感じました」。そう振り返る一方で、冷静に投手に声をかけ、配球で打者を翻弄し、強肩で走者を牽制した。

 5番打者として、バットでも値千金の1本を放った。3回裏2死二、三塁の好機に、フルカウントから中前へ逆転適時打。「初回のチャンスで返せなかったので、次はなんとか打ちたいと思っていました。無駄な球を振らず、集中しました」とうなずいた。橘田恵監督は「配球とかプレッシャーがある中でしっかり決めてくれた」とねぎらった。劣勢だった25日のキューバ戦でも勝ち越し打を放っており、ここ一番での勝負強さが光る。

 広島でプレーする兄・涼太捕手の影響で5歳から野球を始めた。日本代表は前回16年から2大会連続の選出。「2年前は“やらなきゃ、やならきゃ”という感じで余裕が全くありませんでした。あの時の経験があるので、今はピッチャーへの声かけも余裕を持ってできています」とこの2年間の成長を語る。
 
 30日のベネズエラ戦の勝敗に関わらず、31日の決勝進出が決まった。「苦しい展開でも粘れるのが日本の強さ。気負わず、一つ一つやっていけば、結果はついてくると思います。ここまで来たら全勝して、いい形で決勝を迎えたいです」と力を込めた。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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