あえて問う。「粗利」を増やすにはどうすればよいのか。
「値上げ」。この効果は大きい。経費が変わらず、例えば5%の値上げを実現できれば、粗利率はぐんと向上する。仕入れ値高に先んじて売値が改定できれば、粗利は増える。
「原価低減」も効果がある。製造原価、売上原価の改善は、値上げに等しい粗利率の改善につながる。
だが、原価低減も値上げも「アイディアなしのやりすぎ」はまずい。反動が出てくる。特に原価低減はさまざまな余波を生みやすい。
自動車産業を見よう。グローバル競争の激しさ、厳しさは分かる。自動車産業が日本経済を支えているという事情も分かる(鉄鋼業はそれを支える存在だが)。
しかし、あるレベル以上の「無理は禁物」。力で押していく元下関係であれば、犠牲者も出る。その尻ぬぐいを誰ができるのか。
値上げが必須の時期にもかかわらず、無理をして原価低減の名の下でそれを抑制してしまえば、どうなるか。結果は明らかだ。
乾いた雑巾を絞るのは「一度霧吹きで湿らせてから」であり、無理にねじを締めるとボルトやナットは破損する。結局、因果は自分に還ってくる。
仕入れ値アップ分を売値に反映させず、逆に「値下げ」した場合。当然、粗利はガクンと減る。経費の動向にもよるが、5%値下げしたらおそらく粗利は1割ぐらい減るのでは。
減った分を販売増でカバーして利益額を保とうと考え、1割多く売ろうとする。だが、それにどれほどの苦労と努力が必要なのか。またそもそも、それは可能なのか。
「良品廉価」は大事。それが社会の発展にもつながるだろう。秩序もいずれは変わる。しかし「調和」も大切。特に大手には、調和を保たせる責任がある。こんなこと、プロを前に書くのも恥ずかしいのだが。