クレーム上手の英会話【公共交通編】「運賃が高すぎる」は何て言う?

クレーム上手な英会話を考える今回の連載。飛行機編、空港編と来て3回目の今回は、タクシーやリキシャーなどの公共交通編を紹介します。旅行中はタクシーをいつも以上に利用すると思いますが、時にはクレーム(complaint)を付けたくなる瞬間も出てくるはず。

ちなみにクレームについての基本的な考え方は、連載の初回『クレーム上手の英会話【飛行機編】「機内食が違うけど取りかえて」は何て言う?』に書かれています。この回から読み始めた人は、できれば先に初回をチェックしてみてくださいね。

また、姉妹編のお願い上手のトラベル英会話連載も併せてチェックすると、理解が一層深まると思いますよ。

運転が荒いと注文をつける場合は?

最初は運転の荒さに注文を付ける場面を考えてみます。日本と違って道路事情が整っていない発展途上国でタクシーに乗ると、車内は揺れに揺れますよね。その揺れはある程度仕方ないにしても、揺れると分かっていながら猛スピードで道路のくぼみに車を突っ込ませるドライバーも居ますから、ちょっと怖く感じる場合もあるかもしれません。運転が荒いので改善してほしいと伝えるには、どうすればいいのでしょうか。

この表については、連載の初回で詳しく紹介しています。注文をつける相手はタクシードライバーですから初対面。運転が荒いので、安全運転を心がけてほしいというこちらの要求に、応じる義務や責任が日本的な発想で言えば相手にはあると思われますので、関係はDですね。

運転の荒さがもたらす自分への迷惑はどうでしょうか。やはり命にかかわるトラブルですから、迷惑度は大きいと考えられます。その分だけ丁重さや慎重さは格下げしても失礼には当たらないはずです。同じDでもD-、「慎重にクレームと要求」を「普通にクレームと要求」に格下げします。

しかし、連載の各回で述べてきた通り、相手とこちらの関係は対等です。会社の上司と部下といった明確な上下関係があるわけではありません。頭ごなしに苦言を呈する話し方は避けなければなりません。まずは、

「Excuse me.」

と呼びかけてから、

「Can you please drive a little slower? I would appreciate your driving slower and more carefully.」(もう少しゆっくり走ってもらえますか? ゆっくりと運転し、もっと注意してもらえるとうれしいです)

などと、改善を要求します。この場合は普通に改善を要求しているのですから、言葉はそれほど丁寧でなくても構いません。ただ、後半の分ではwillの過去形であるwouldを使ってみました。姉妹編や今回の連載でも繰り返し触れたように、時制を過去に遠ざけると、遠慮さや控えめさが伝わるようになるのでしたね。

連れていってくれた場所が違っていたときのクレームは?

次はタクシーやリキシャーの運転手に、全く違った場所に連れていかれた場合の英会話を考えます。

相手は初対面のドライバー。こちらの主張としては「正しい目的地まで行き直してほしい」「間違った場所に立ち寄ったために発生した料金は払わない」という2点だと思われます。この要求に、タクシードライバーは応じる義務があるでしょうか。日本流の考え方で言えば義務はあるはずですから、関係はDです。しかし、こちらが間違った行先を伝えたと相手も主張してくるかもしれません。なぜもっと早く誤りを指摘しないのかと突っ込んでくるかもしれません。ちょっと面倒なケースですね。

また、面倒な分だけ迷惑度も大きいと考えられますから、同じDでもD-、「慎重にクレームと要求」を「普通に要求とクレーム」に格下げしても、問題はないと考えられます。

なぜもっと早く誤りを指摘しないのかという反論には、

「I’m not from around here. I don’t know the way at all.」(私はこの辺りを知らないので、道など全く知りません)

などと反論できますが、行先については水掛け論になるかもしれません。言った、言わないの話になったら、

「I’ve recorded our directions on my cell phone. Will you listen to it?」(私は携帯電話で行先についての指示を録音しています。聞きますか?)

などと、かまをかけてみると効果的かもしれませんね。念のため、旅先では本当に録音しておくという手もあるのかも・・・。

ただ、忘れてはいけないポイントとして、相手と自分は対等の関係にあります。高圧的な態度で出ると、けんかになってしまうかもしれません。タクシーが到着して、場所が違うと発覚したら、

「Excuse me.」

と呼びかけ、

「I’m afraid this is not where I asked you to take me. Will you take me to the right place? As I said before, I’ll only pay the regular fare from our departure point to my destination.」(恐れ入りますが、ここは私がお願いした場所ではありません。正しい場所まで連れていってくれますか? 最初に言った通り、私は出発地点から目的地までの正規の料金しか払いません)

と、下線で前置きしてから、状況を伝えてください。I'm afraidという表現は、何か相手に好ましくない言葉を伝える前に口にする便利な言葉ですね。クレーム(complaint)を言うというよりも、事実を基に状況を伝え、相手を動かそうと試みてください。相手を攻撃するような言葉は厳に慎みたいですね。

タクシーやリキシャ―の料金が法外に高いと感じたときは?

最後はタクシーやリキシャ―の料金の支払い額が高すぎると感じた場合。

この場合、相手のドライバーは初対面ですね。「料金が高すぎる」「正規の料金に下げてほしい」というこちらの要求に応じる相手の義務は、微妙なところだと言えます。よってBかD。ただ、何か根拠がある場合は、相手が不正に料金を釣り上げている可能性があります。よって、Dと言えるはずですね。

さらにこの場合、迷惑度も大きいですので、負担の大きさの分だけ、慎重さや丁重さを格下げしても問題なさそうです。同じDでもD-ですね。「慎重にクレームと要求」を「普通にクレームと要求」に格下げしても構いません。

「Excuse me.」

と呼びかけ、

「This fare seems expensive because my guidebook says it is about US$20 from the airport to the museum.」(この料金は高い気がします。なぜなら私のガイドブックには、空港から美術館が約20米ドルと書かれています)

などと、下線に引いたような根拠を明示して、相手に主張をぶつけます。言葉そのものは特に丁寧さを感じませんが、相手は立場も対等です。頭ごなしに文句をぶつけるのではなく、事実を伝えながら、相手の心を動かしていきたいですね。

※文中の英文は全てネイティブスピーカーのチェックが入っています。

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