支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 担い手の住民たち(4)

◆移動支援に成果 利用者のニーズ検討深化

 横浜市泉区社会福祉協議会の生活支援コーディネーターの取り組みと、社会福祉法人の「公益的な取組」(改正社会福祉法)を組み合わせ、社会福祉法人などによる地域貢献を目指した「泉サポートプロジェクト」(代表・鈴木啓正たちばな会理事長)。プロジェクト第1弾となった高齢者サロン「高齢者の居場所づくり」(本郷守男代表)での送迎では、本郷さん(80)ら居場所の世話人と、たちばな会の生活相談員成島咲子さん(41)、下和泉地域ケアプラザの生活支援コーディネーター木下ひろみさん(47)らによって詳細が詰められた。

 2008年に発足し、毎週木曜日に開催される居場所には現在、高齢者19人が登録。毎回十数人が参加している。ただ、過去に参加していたが、歩いて来られなくなり参加をやめた人もいる。参加したくても移動手段がなく参加できない人、家族の送迎がない時は来られない人らも含め、女性8人を送迎の対象者とした。

 送迎回数は月1回。たちばな会が運営する特別養護老人ホーム「天王森の郷」、地域密着型通所介護「デイサービスセンター天王森の郷」の車両から1台を活用し、運転は乗り慣れている同会職員が担当することにした。

 また、「体調トラブルの可能性もあるので、会の介護職員が添乗することにしました」と成島さん。そして居場所の世話人も同乗する。「顔なじみの世話人が来てくれれば、高齢者も安心感があり玄関に出やすい。世話人なら近所の人とも話ができ、見守り機能も果たせます」。3人体制での運行となった。また、重い大正琴を抱えて居場所を訪れ、演奏を披露してくれていたボランティアの送迎も行うことになった。

 同会の職員にとっては業務の増加だが、運転も添乗も、できるだけ多くの職員がローテーションで行うようにしている。「人をやりくりし、それほど重荷にはなっていません」と成島さんは語る。

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 17年10月、送迎が始まると感激の再会も生まれた。

 前田トシ子さん(91)は開設時から居場所に通い、友人との交流を楽しんでいた。しかし、膝の病気や体調不良などで4年前から居場所に行けなくなってしまった。「落ち込んでしまって、老人会の集まりにも行かなくなり、家に引きこもっていました」

 そこへ居場所の世話人を当初から務めている中嶋光代さん(73)から「送迎が始まるのでもう一度来てはどうか」と誘いの電話が掛かってきた。気を取り直し、再び通うことを決めた。そして、懐かしい友人たちと4年ぶりの再開。「楽しい時間を過ごしました。本当にいいことをしてくださった」と喜びの声を上げた。

 また、家族の送迎がなければ来られないという84歳の女性、自分で車を運転するのは心配になってきたという1人暮らしの77歳の女性らも送迎を受けて感激の様子だ。「本当にありがたい」「とても助かります」。スタッフに感謝の言葉を続けた。

 泉サポートプロジェクトでは今後、区社協と地域ケアプラザの生活支援コーディネーターを調整役にして、さまざまな地域ニーズへの対応を検討していく計画だ。

 食事会やサロンの送迎のほか、施設の地域開放、職員による介護講座など、さまざまなニーズ、アイデアが出されている。木下さんは「法人の特徴も把握して、広く取り組んでもらえるようにしていきたい」と話した。

 ◆横浜市泉区の特別養護老人ホーム 農地面積、市街化調整区域割合が横浜市内18区中1位の泉区では、特別養護老人ホームが数多く開設されている。2018年4月現在、従来型(多床室)8施設、ユニット型(個室)7施設の計15施設。県内市区町村では、横須賀市(21施設)、相模原市南区(地域密着型含め20施設)、横浜市旭区(19施設)、藤沢市(地域密着型含め17施設)に次いで多い。高齢者人口に対する施設数でみても、横浜市内平均の倍以上で、県内市区町村の中でトップクラスの充実度となっている。

泉サポートプロジェクトで、高齢者の移動支援を行う社会福祉法人たちばな会の職員ら

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