「目標の“トップ5”を果たせるか。ジュビロ磐田が立つ分岐点」

J1復帰2年目の昨季に6位と躍進したジュビロ磐田。

「トップ5」を目標に掲げた今季は開幕2連敗スタートとなったが、徐々に立ち直り安定して中位をキープ。怪我人の続出や予期せぬアクシデントにも動じず、目標達成を十分狙える位置にいる。

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今回の当コラムでは、復権に向け歩みを進める“名波ジュビロ”に焦点を当て、今季の戦いぶりを振り返りながら考察していきたい。

■リーグ屈指の2トップを活かす形に

今季開幕前に名波浩監督は、「新システムの導入」を示唆していた。

ただ、開幕からメインで用いられたのは3-4-2-1で、実際に新布陣(3-5-1-1)がお目見えとなったのは、7月11日に行われた天皇杯3回戦のレノファ山口戦だった。

その後は3-5-1-1(もしくは3-5-2)に加え、3-4-2-1や4-1-4-1、3-4-1-2も併用。直近の3試合は川又堅碁と大久保嘉人の2トップを活かす3-4-1-2が採用されている。

■怪我人が相次ぎ、シフトチェンジを敢行

今季も複数のシステムを使い分けてきた名波監督だが、怪我人の続出に頭を悩ませた。

3月にアダイウトンとムサエフがそれぞれ全治半年の大怪我を負ったのに始まり、司令塔の中村俊輔と期待の若手FW小川航基も戦線を離脱。更には、左ストッパーとして定位置を確保した新里亮も8月1日のガンバ大阪戦で今季絶望の怪我を負ってしまったのだ。

いずれも戦力ダウンとなったが、特にダメージが大きかったのはアダイウトンの離脱だ。

馬力のあるドリブル突破が売りの背番号15は、ロングカウンターでそのストロングポイントを存分に発揮。独力で局面を打開し、守備でも献身的に振る舞える稀有な存在だった。

このブラジリアンを欠いた後は、新加入のギレルメが攻撃のアクセントとなった。加入当初は周囲と噛み合わなかったが、徐々に適応するとドリブル突破で違いを生み出していた。

しかし、5月2日の横浜F・マリノス戦で暴力行為を働き、同15日に契約解除。アダイウトンに続き、ドリブラーを失ってしまったのである。

これによりロングカウンターの破壊力が失われたチームは、コンビネーションを高めてチャンスを作る方向性にシフトしていく。中村が継続的にピッチに立てなかったとはいえ、田口泰士、松浦拓弥、山田大記、上原力也らテクニックに秀でたMFが揃っており、その下地は十分にあった。

これはあくまでも推測だが、指揮官が新システム(3-5-1-1)にトライしたのも、よりポゼッションを高める目的があったのではないか。

アンカーの前に2枚のインサイドハーフを置くことでトライアングルを作りやすくなり、ボール回しが円滑になる。そして、3-4-2-1では孤立する場面も多かった川又の下にサポート役を配することで、エースの負担を軽減する狙いがあったはずだ。

■「トップ5」へ向け、少なくない朗報が

とはいえ冒頭でも触れた通り、直近の3試合では大久保と川又の下に攻撃的MFを置く3-4-1-2がメインとなっており、3-5-1-1(もしくは3-5-2)はオプションとなっている。

この3-4-1-2を導入する上で大きかったのが大久保の加入だ。

時に中盤に降りてきてチャンスメイクし、前線で起点となれるベテランFWは川又との連携も良好。23節の柏レイソル戦で移籍後初ゴールを奪うと、24節の鹿島アントラーズ戦では試合終了間際にPKを決め、2試合連続でネットを揺らした。

しかし、3試合連続ゴールが懸かった25節の名古屋グランパス戦では、沈黙を余儀なくされ、チームも1-6と大敗を喫した。先制を許した前半は互角の戦いを演じていたが、68分に3点目を決められたのが尾を引き、名古屋に7連勝を許してしまった。

25節を終え、8勝8分9敗の勝点32で10位につけており、5位・セレッソ大阪との勝点差は7。まだまだ目標達成が十分できそうな位置にいるが、負けが込めば一気にJ2降格がちらつく可能性も否めない。

一時は最下位に沈んだ名古屋がここにきて絶好調を維持し、下位に苦しむG大阪とサガン鳥栖も政権交代や夏の補強効果が表れ、勝点を拾えるようになってきたからだ。

混戦模様となりつつある残留争いに巻き込まれず、上位進出を実現するのが残り9試合でのミッションとなる。名古屋戦のショックが大きいとはいえ、ミッション達成に向け明るいニュースは少なくない。

まずは、怪我人の復帰だ。名古屋戦では中村と小川航が揃ってベンチ入り。前者は78分に松浦と交代で登場し、大井健太郎のゴールをアシスト。左足のキックはやはり脅威であり、完全復調へ期待は膨らむ。

そして8月29日には、トルコのコンヤスポルからDFエレンを獲得。クロスが強みと語る27歳のトルコ人は左ウイングバックが主戦場となりそうで、ギレルメの穴を埋める活躍が求められる。

加えて、若手の成長も見逃せないトピックだ。

ここ3試合はマルチロールの松本昌也が右ウイングバックで起用され、23節の柏戦では先制点をゲットした。更に、同試合ではボランチの伊藤洋輝がリーグ戦デビューを飾っている。負傷が癒えた小川航や20節の仙台戦でリーグ戦初得点を決めた中野誠也ら若武者たちが結果を残せば、チーム力向上は間違いないだけに、こちらも期待したいところだ。

日本代表の試合が9月7日及び11日にある影響で、J1は約2週間のインターバルに入る。この間に名古屋戦のショックを振り払い、目標達成へ向け自信を取り戻すことができるか。

残り9試合で上手く行けばトップ5、悪い方向に進めばJ2降格――。分岐点に立つ名波ジュビロが今後真の強豪になれるのか、ラスト3か月は大きな意味を持つ。

2018/09/01 written by ロッシ

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