「五島ジビエ」営業開始 イノシシ、シカを食肉処理

 野生イノシシとシカの食肉処理や加工をする「五島ジビエ合同会社」が3日、長崎県五島市岐宿町で営業を始めた。農作物の食害など防ぐために市や一般狩猟者が捕獲した個体を引き取り、食肉を島内外の飲食店などに販売する。市内では初めての試みで、新たな五島産食材としても期待される。
 市農業振興課によると、野生動物による市内の農業被害は深刻化している。2017年の被害額はイノシシが前年比2倍の234万円、シカは同1・2倍の452万円に上った。市内の捕獲数も年々増加。17年度はイノシシ625匹、シカ484匹が捕まったが、多くは焼却処理された。
 そうした現状に目を付けたのが、14年に東京から五島に移住した永田義次さん(63)=長崎市出身=だった。「加工場があれば食肉として有効活用でき、地域振興や農業被害の抑制につながる」と考え、島内の20~30代のU・Iターン者3人と会社を立ち上げた。
 食肉処理施設は、廃校となった旧岐宿小旭分校の校舎を改修し、洗浄や解体、冷凍保存などができる設備を整えた。今年6月末に保健所の営業許可を取得。その後2カ月は社員が解体作業の訓練に取り組み、今月の本格稼働にこぎ着けた。同社は国境離島新法に基づく雇用機会拡充支援事業の補助金も受けている。
 2日は施設の開所式が現地であり、市や経済団体の関係者ら約30人が祝った。永田さんは今後、ハムやソーセージなどの加工品やドッグフードも開発する考えで、「牛や豚、魚に続く五島の魅力的な食材として、ジビエを売り出したい」と意気込む。

五島ジビエ合同会社を設立した永田さん。手前は解体して部位ごとに切り分け、冷凍したイノシシやシカの肉=五島市岐宿町唐船ノ浦
開所式で、看板の除幕に臨む関係者

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