【品質管理の不適切行為、フジクラの会見要旨】伊藤社長「全容解明に向け調査指揮」

 フジクラは送配電用や産業用の電線などで顧客と取り決めた検査の一部未実施や、検査データの改ざんなどの不適切事案があったと発表。伊藤雅彦社長・滝沢功常務取締役、大橋圭二品質保証部長の3人が先月31日都内で会見した。要旨は次の通り。

――不適切事案の背景は。

伊藤「モノづくり力への過信や技術力の驕りがあったかもしれない。一部検査を省いたケースは長年顧客と取り決めてきた検査項目を、自らの認識だけで必要ないと判断する間違った方向に考え方が傾いてしまった。本来検査変更は顧客と真摯(しんし)に話し合ってするべき」

――関わった10拠点の内訳は。

滝沢「当社では本社と佐倉・鈴鹿・沼津の4拠点。国内グループ会社では米沢電線と西日本電線、フジクラ・ダイヤケーブル、フジクラコンポーネンツの4社、海外ではマレーシアのフジクラフェデラルケーブルとフジクラエレクトロニクスタイランドの2社が対象となっている」

――このタイミングで公表したのは。

滝沢「昨年末最初の報告があった際は個別契約に関わるもので、守秘義務もあったため当社として公表する立場にはなかった。ただ今年6月の再調査で汎用製品でも不適切事案が見つかり、調査を加速させることが必要になった。加えてJIS規格に関する問題も出てきたため公表した」

――汎用品とは。

大橋「汎用品は電材店やビルの工事業者に販売している一般的な低圧電線や施設の配線に使う構内ケーブルなど。外皮に使う樹脂材料のコンパウンドなども含まれる」

――現時点までにJISの取り消しなどは。

大橋「JISについては製造設備の追加や検査方法の変更など品質管理体制の変更時に認証維持審査があるが、その届け出が遅れた。現時点で取り消し処分はない」

――不適切事案の件数はこれ以上増えることはないか。

滝沢「すでに2度調査しており、かなりの部分は出ていると思うが、あくまで内部調査。外部の弁護士が調べることでこれから件数は変わってくる可能性はある」

――責任についてはどう考えるか。

伊藤「今回の事案を厳粛に受け止めている。まずは全容解明に向け万全な調査を指揮するのが私の責任。その役目を全うする。原因究明と再発防止策がそろった時点で関係各所の意見をいただき責任の所在と取り方を含め議論する」

――全容解明のめどは。

大橋「今回発覚した事例の根本的な原因と再発防止策の策定を終えてはじめて実際の措置につながる。それについては今年中の終結を目指し弁護士と我々で協力して取り組む」

――監督官庁からの要請は。

滝沢「経産省からは全容解明と安全性の検証など事実関係の究明、情報提供などの積極的な対応、経緯や今後の対応の十分な対外説明、原因の徹底究明と再発防止策の実施の4点を迅速に行うよう要請された」

――最終的な安全性はどの程度担保されているのか。

滝沢「我々の製品は生産材なので顧客と一緒に安全性の評価を早急に進めなければならない。現在までに汎用品以外では全顧客に報告し、直ちに改修という指示は頂いておらず、あるレベルでは安全性には問題がないとは思う。ただ今後は厳密を期する意味で裏付けのためのデータや情報の提供に全力を尽くす」

――社長は電力ケーブルの製造部長や情報通信事業の副統括を務めたが不適切事案を認識してはいなかったのか。

伊藤「本件は一切知らなかったが、そのことは製造・営業現場とトップの間で意思疎通が不足していたという意味で問題だった。もう少し現場の声を引き出す環境があれば早期に不正の芽を摘めたかもしれない。これからはそのような事業運営をしていきたい」

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