海洋研究開発機構など、深海底でコンクリ劣化試験を開始 資源開発に向けデータ蓄積

海洋研究開発機構など、深海底でコンクリ劣化試験/資源開発に向けデータ蓄積

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、八戸工業大学および不動テトラと共同で、世界最大深度における海中コンクリート試験を開始したと発表した。過酷な環境下で急速に進むコンクリートの経年劣化速度を予想するための実測データなどを集め、海洋資源開発などで増加が見込まれる深海域におけるコンクリート構造物を安全に施工するための基礎データを蓄積する。

 実データに基づき蓄積される知見は、深海域での海底観察や資源採掘のための機器の展開に寄与し、海底開発を次の段階に推し進める原動力になるとして期待されている。

 同試験では、深海曳航調査システム「ディープ・トウ」を用いて水深3515メートルの海底にプラットフォームを設置し、そこに有人潜水調査船「しんかい6500」によって深海域にコンクリート供試体を設置。今後、深海底に曝露させたコンクリート供試体を定期的に回収し、力学試験や構造・化学組成分析を実施し、深海環境におけるコンクリートの経年劣化度合いを調査する。

 深海域に設置されたコンクリート構造物は、高圧低温環境下に晒され、さらには海水の化学組成に起因するカルシウムの溶脱によって経年的な劣化が急速に進むことが懸念される。深海域にコンクリート試料を運搬するために高度な技術が必要とされる一方で、3千メートル以深におけるコンクリートの曝露試験は世界的に行われておらず、経年劣化速度を予想するための実測データや数理モデルがないという課題がある。

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