【侍U-18代表】「とても楽しかった」―スリランカのひたむきさに見たアジア選手権開催の意義

スリランカU-18代表のはつらつとしたプレーに観客からも何度も大きな拍手が送られていた【写真:荒川祐史】

実力差が明らかな日本に大敗も…度重なる好守には観客から大きな拍手

 宮崎市内で行われている「第12回 BFA U18アジア選手権」。4日、大会2日目が行われ、2大会連続優勝を目指す侍ジャパンU-18代表はKIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎でスリランカ代表と戦い、15-0の6回コールドで圧勝した。前日の香港代表戦に続き、2連勝でスーパーラウンド(SR)進出を決め、5日は宿敵の韓国と、グループA首位の座をかけて第3戦を戦う。

 侍ジャパンU-18代表と、4日に対戦したスリランカ代表。結果は15-0と大差をつけられたものの、中堅手のハシャン・セニヴァイラスネが2回に小園海斗(報徳学園)の右中間への大飛球をランニングキャッチ、3回には藤原恭大(大阪桐蔭)の中前へのフライをダイビングキャッチと、度重なる好守を披露。大敗したものの、懸命にプレーするひたむきさに、観客からも何度も大きな拍手が送られていた。

 このU18アジア選手権に参加しているのは、侍ジャパンU-18代表のほか、韓国、チャイニーズ・タイペイ、中国、香港、スリランカ、インドネシア、パキスタン(大会直前にチーム事情により不参加に)の8か国。実際のところ、侍ジャパンU-18代表と真っ向から戦えるのは、韓国とチャイニーズ・タイペイの2か国だけ。前日の香港代表戦、そして、この日のスリランカ戦を見れば、お分かりだろうが、日本との差は明らかである。

 日本は香港に26-0、スリランカとは15-0だった。韓国は香港に41-0で勝ち、チャイニーズ・タイペイもインドネシアに29-0で勝っている。大きく開く実力差には、厳しい声も聞こえてくる。“大会やる意味あるの?”“時間の無駄”“日本と韓国、台湾の3か国でやればいい”。でも、ちょっと待ってほしい。果たして本当にそれでいいだろうか。

 目の前のスリランカ代表選手たちは、とにかくひたむきにプレーしている。どれだけ点差が開いても、諦めることなく、一生懸命にボールを追っている。そして、楽しそうだった。このような大会が行われる意義はどこにあるのか。その答えを、スリランカ代表が教えてくれている。

好プレーを見せたスリランカU-18代表のハシャン・セニヴァイラスネ【写真:荒川祐史】

「レベルが低いもの同士でやっていても、レベルは上がりません」

 スリランカ代表のマノジュ・フェルナンド監督は侍ジャパンU-18代表との試合後、こう語ってくれた。

「日本は世界ランク2位、スリランカは40位です。実力の差があるのは分かっています。5回で終わるものと思っていましたが、選手が頑張ってくれて6回まで戦うことができました。7回までいきたかったのでそこは残念ですが、良かったと思います。強いチームとやることが、強くなるための道なのです。フレンドシップと、そしてこういう環境の中で野球ができることに感謝をしています。レベルが高いところとゲームをやると、レベルを上げられる。レベルが低いもの同士でやっていても、レベルは上がりません。この大会はスリランカの野球の発展に大きく繋がると思います」

 この大会は、アジアの頂点を争う戦いである。ただ、その一方でアジア地域における野球の発展、振興にも大きな役割も果たしている。4日には、野球用具メーカーなどが作る「野球・ソフトボール活性化委員会」から、今大会を主催するアジア野球連盟(BFA)を通じて、スリランカとインドネシアにグラブなどの野球用具が贈られている。日本や韓国、チャイニーズ・タイペイのような野球“先進国”は、他国の見本、手本となり、プレーや姿勢を見せなければならない。それを直に見た野球“発展途上国”の選手は、その経験をもとに成長を遂げ、さらには、もっと下の世代へと経験と技術を伝えて自国の野球発展に繋げていく。その一歩として、この大会はあると言えるだろう。

 この日、中堅で好プレーを見せてくれたハシャン・セニヴァイラスネ。大敗を喫したにも関わらず、その顔は笑顔と充実感に満ち溢れていた。周囲から溢れる否定的な声とは真逆で、どこまでも楽しそうだった。彼も試合後にこう語ってくれた。

「日本とスリランカの野球には大きな違いがあります。日本にはこんなに綺麗な球場がたくさんありますけど、スリランカには1つの球場しかない。開会式が行われれば、あとの試合は全部その球場でやります。この大会に参加できたことはいい経験、歴史的な経験になったと思います。日本のようなチームとこういう国際試合を戦うと、点差はつきます。ですが、僕たちは最後の1球まで諦めることはありません。今日はとても楽しかったです」

 圧倒的な大差がついた試合結果は致し方のないところ。ただ、この結果以上に大事なものがグラウンド上にはあり、それをスリランカや香港、インドネシアといった出場チームの選手たちは今、経験し、体感している。決して、大会が無意味だと言うなかれ。アジアの野球振興、各国の友好など様々な意義の込められた大会を、侍ジャパンU-18代表は今戦っている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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