第100回の節目を迎えた高校野球の盛り上がりが全国に広がった今夏、同じ高校生たちが懸命に汗を流す全国高校総体(インターハイ)が、7~8月の東海地方を中心に開催された。
筆者は硬式野球部だったため、インターハイにはあまり馴染みがなかったが、この夏にかけてきた選手たちの熱いまなざしに惹きつけられた。
2年後の東京五輪での活躍が楽しみな選手もおり、報道陣から五輪への思いを問う質問が相次いだ。
出場に向けての決意や、憧れを口にする選手も多く、自国開催の五輪を意識していることがうかがえた。
一方で、2020年へ大きく羽ばたこうとする選手たちが、インターハイを未来へのステップとして捉えるのではなく、3年間をともに過ごしてきた仲間への感謝の気持ちでプレーする姿も印象的だった。
選手たちは自分のためだけでなく、それぞれの期待を背負って戦っており、その姿に心を動かされた。
大会中、取材で2人の石川選手に出会った。競泳男子バタフライの石川慎之助(愛知・中京大中京)は100メートルと200メートルで2冠を達成した。
100メートルの予選通過後には、報道陣に対して「優勝はできると思うので大会記録を狙う」と臆することなく宣言。決勝では大会新記録どころか9年ぶりに高校記録を塗り替えた。
ふてぶてしいほどの発言で大物ぶりを感じさせる一方、「頼りないキャプテンだと思うけど、インターハイで戦う3年生の姿を見せられたら」とバトンタッチする後輩への気遣いも忘れなかった。
女子バレーでは、男子日本代表のエース石川祐希(シエナ)を兄に持つ石川真佑(東京・下北沢成徳)が、2年ぶりの栄冠に貢献した。
身長は170センチ台と飛び抜けて大きいわけではないが、コースに打ち分ける的確なスパイクとセンスの良さが光った。
試合後には石川を一目見ようという“出待ち”もいて、将来ヒロインとして活躍する姿を予感させた。
1年生の時にもインターハイを制覇しているが、「自分が点を取れない時に、他の選手が決めてくれて助かった。金メダルをこのメンバーで取れてうれしい」と話し、同級生とともに手にした優勝は格別のようだった。
インターハイ終盤、残念なニュースが流れた。アジア大会バスケットボール日本代表の選手たちによる不祥事だ。
その中には、かつてインターハイに出場した選手も含まれていた。
今大会に出場した選手たちは非常にハイレベルだったが、それでも世界の舞台に立つことができる選手は、ごくわずかだろう。
だからこそ、日の丸を付けて世界に出ることになる選手たちには、夢破れた選手たちがいることを忘れないでほしい。
そして、高校時代に感じたであろうチームメートや友達、さらに学校や地元からの期待や後押しを忘れずに胸を張ってプレーしてほしい。
繰り返すが、日本代表選手として世界で活躍できるのはごくわずかだ。
今回、東海の地で素晴らしい活躍をした選手たちが、より成長した姿を見せてくれることを楽しみに待ちたい。
原嶋 優(はらしま・ゆう)プロフィル
2017年共同通信入社。千葉支局での県警担当を経て、18年5月から本社運動部。大阪府出身。