沖縄では選挙に次ぐ選挙!沖縄統一地方選挙はなぜ他の地域と時期がズレているのか?

現職の翁長雄志沖縄県知事の急逝に伴う沖縄県知事選挙に向けて、各陣営が急ピッチで準備を進めていますが、沖縄の選挙はこれだけではありません。例えば9月9日には、沖縄県内26市町村の議会議員選挙が行われます。これを「沖縄統一地方選挙」と呼ぶ事があります。

全国で行われる統一地方選挙は来年2019年4月に予定されていますが、このズレはどうして発生したのでしょうか。その秘密は第二次世界大戦後の沖縄がたどった歴史に隠されていました。
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占領下の「メイヤー」

1945年3月から6月まで続いた壮絶な地上戦を経て終戦を迎えた沖縄は、本土から切り離されアメリカ軍によって統治されることとなりました。

アメリカ軍による占領後、本島内各地には収容所が設置され、軍による住民の生活保護単位を「市」や「村」と便宜的に呼称していました。その地域における軍令の住民伝達や食料配給、住居建設など住民の世話役となる人物をアメリカ軍地区隊長が「メイヤー」として任命し、「市長」「村長」などと呼ばれていました。メイヤーは現在のような市長や村長と異なり選挙を経ずに選ばれ、アメリカ軍に協力的で軍政要因に親しまれた人が多く任命されたようです。
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本土に先駆けて「女性参政権」を認めた戦後最初の選挙

終戦間もなくの1945年9月25日にアメリカ軍政府は「地方行政緊急措置要綱」を交付して、沖縄本島内の辺土名、田井等、瀬嵩、久志、古知屋、宜野座、漢那、石川、前原、平安座、胡差、知念の12市と本当周辺離島の粟国、伊平屋、慶良間列島、久米島の4市を設定し、同月20日に市議会議員選挙、25日に市長選挙を実施しました。この際にメイヤーは自然解任されています。

ただし実際に選挙が行われたのは本島内の12市だけで、離島では本島と比べて村の形態が戦前とあまり変わりなかったこともあり、既にアメリカ軍によって村長が任命されており、選挙の必要がなかったようです。

この選挙では女性の参政権も認められており、これは日本本土で初めて女性参政権が認められた選挙となった1946年4月衆院選に先立つ事例としても意義深いものと言えます。
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住民の移動に伴う市町村の復活

「地方行政緊急措置要綱」によって市政が布かれたものの、まもなく軍の命令によって住民が収容所から従来から居住していた地域に戻り戦後復興が始まると、戦前の市町村が復活して12市の市長と市議会議員はわずか5ヶ月以内に自然解任されることとなりました。
これを受け軍政府は1945年12月4日に「村政の組織」と題した軍指令を公布し、選挙ではなく軍政府によって新しい市町村の村長を任命しました。

沖縄県知事の復活

沖縄戦に巻き込まれ、1945年6月に島田叡沖縄県知事(官選)が消息不明となって以来沖縄県知事のポストは不在となっていましたが、1946年4月に軍政府は「沖縄中央政府の創設」という指令を交付し、軍政府によって招集された住民代表者会議が選んだ県民による諮問機関、沖縄諮詢会(しじゅんかい)の代表であった志喜屋孝信氏を県知事に任命しました。この際、1948年2月に選挙が許可されるまで県知事が市町村長を任命することと定められました。

新生市町村で最初の選挙

1947年12月に軍政府は特別布告「選挙(市町村長並びに議員)」を公布。琉球列島の市町村長と議員の選挙を行うことを定めました。これを受けて翌1948年2月1日に市町村長選挙が、同月8日に市町村議会議員選挙が実施されました。

時期がズレたまま現在に至る沖縄統一地方選挙

軍政府はこれまで暫定的だった市町村の地位を改め、市町村議会の解散や市町村長の解職申請権、市町村長と議会の関係などを規定した「市町村令」を1948年7月に公布するとともに「市町村議会議員及市町村長選挙法」を定め、同年2月に選ばれた市町村長と議会議員の後継を決める選挙を1950年9月に実施することとしました。
これに伴い、1950年9月3日に沖縄、宮古、八重山の各群島で一斉に市町村選挙が行われ、以降現在に至るまで4年に1回実施されているのが沖縄統一地方選挙の源流なのです。

一方で日本本土では翌月に日本国憲法施行を控えた1947年4月に全国一斉に市町村長と市町村議会議員選挙が実施されたのが統一地方選挙の始まりです。

戦争によって日本本土から切り離され、地上戦を経て崩壊した市町村でアメリカ軍政府の元、選挙制度が整えられてきた沖縄の歴史の名残が現在に至るまで統一地方選挙のズレとして現在に至るまで続いているのです。

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