川棚町長選 財源確保 考え方に相違 山口候補 行政経験と知識に自信 毛利候補 町の魅力売る営業マン

 任期満了に伴う東彼波佐見町長選と東彼川棚町長選の投開票が9日に迫った。波佐見町長選には6選を目指す現職、一瀬政太氏(74)=無所属=と、新人で前町議会副議長、藤川法男氏(60)=無所属=が、川棚町長選には3選を目指す現職、山口文夫氏(71)=無所属=と、新人で元町議、毛利喜信氏(43)=無所属=がそれぞれ立候補。いずれも一騎打ちの構図で舌戦を繰り広げている。有権者が選ぶのは町政の「継続」か「刷新」か-。選挙戦終盤の情勢を探った。
 川棚町長選は、豊富な行政経験を武器にした山口文夫候補と、民間感覚や若さを生かした“攻め”の姿勢を打ち出す毛利喜信候補による8年ぶりの選挙戦。ともに子育て政策を公約の目玉に据えるが、財源確保の考え方には「行政マン」と「営業マン」の違いが見られるなど対照的で、有権者の選択が注目される。
 山口候補は、第2子以降の保育料無料化や、第3子以降への手当支給など2期8年で実現した独自の子育て支援策を強調。「事業の財源確保には、各種行政法の熟知が必要。誰が町長にふさわしいか(答えは)おのずと出てくる」とし、町職員時代の知識と経験をPRする。
 公立小中学校のエアコン設置や給食費の全面無料化などを目指す毛利候補は、ふるさと納税増額、大崎半島観光事業の民間委託で財源確保を提唱。会社役員という民間の視点で「財源が厳しいから何もしない、では町は発展しない。町の営業マンとして魅力をつくり、売り出す」と力説する。
 集会などの動員数は強固な後援会組織を持つ山口陣営が圧倒。だが陣営幹部は「町の借金を減らし、貯金を増やした実績が一般町民にどこまで浸透するか」と気をもむ。交流人口拡大が目覚ましい波佐見町や民間を巻き込んだまちづくりが盛んな東彼杵町と比べ「川棚は出遅れている」との声も聞こえ、毛利陣営は「変化を求める人は多いはず」と浮動票取り込みを急ぐ。
 毛利陣営は町議の田口一信氏(69)が後援会長を務め、前町長の竹村一義氏(71)も顔を出す。2人は8年前に山口候補との三つどもえで敗れた因縁があり、今回の選挙を「リベンジマッチ」と見る向きも。8年前の落選2人の合計得票は、当時の山口候補を上回り、田口氏は「足し算通りにはいかないまでも、いい勝負になる」とそろばんをはじく。だが、山口陣営の幹部は「8年前とは全く状況が違う」と一蹴する。
 長年の懸案である石木ダム建設問題については両候補とも推進の立場。山口候補は初当選した8年前の選挙戦で「積極的に問題に関わるべきだ」と主張していたが、今回はほとんど触れず、推進派の元地権者は「8年間、何もしなかった証拠」と手厳しい。毛利候補は「反対地権者と県の橋渡し的な協力を」と語るが、水没予定地住民は「聞こえのいいことを言っているだけ」と冷ややかだ。
 有権者からは「論戦がかみ合わず、いまいち盛り上がらない」との声も聞かれ、両陣営ともに投票率は8年前の69・15%を下回ると予想する。有権者数は1万1753人(男5479、女6274)=3日現在、町選管調べ=。

出陣式に集まった支援者と握手を交わす候補者(左)=川棚町

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