沖縄の未来 どうする? 「#みんなごと」

「自分ごと」ってあるけど、若者みんなで疑問を出し合って沖縄のことを考えてるから「みんなごと」。若者をVOTE(投票)につなげるようにみんなの意見でつくっていくよ。
 

「沖縄のために自分に何ができるか考えたい」「翁長知事が亡くなって、人任せではいけないと思うようになった」。そんな思いを持って7月下旬、沖縄キリスト教学院大の学生たち8人が集まりました。

日々の生活で感じる疑問や課題を話し合うと、授業に出られなくなるほど長時間のアルバイト、高級ホテルなのに時給800円を切る低賃金、家事・育児を一手に引き受けながら働く女性たち―と、切実な現実がどんどん出てきます。

9月30日には県知事選があります。自分たちの代表を選ぶ選挙は、自分たちで自分たちの地域をつくる第一歩。でも「よく分からない」「投票して何か変わるの?」というのが多くの若者の正直な気持ち。10~20代の投票率は他世代よりも格段に低くなっています。

「どこか遠いところにある県知事選を自分たちのものにしよう」と学生たちと琉球新報は若者目線の「選挙記事」を作ろうと考えました。まずは、琉球新報の新垣毅政治部長に選挙の意味や県政の課題を解説してもらい、学生から候補者への質問をまとめました。

学生たちの質問に一般の皆さんからのものを合わせて候補者に尋ねます。誰にも聞けなかった素朴なものこそ大歓迎。あなたの声を聞かせてください。

「勉強したいから大学に入り、学費のためにバイトしているのに、バイトが忙しくなりすぎて授業に出られない。本末転倒だよね」
「最低賃金を上げてほしい。なんで上げられないのかな」
「忙しい時期、昼間から翌朝5時まで帰れなかったことあるよ。学校あったのに。バイトなのにちょっと上の立場になったら、他の子を30分休憩させるために18時間連続で働いた」
「上司に言った?」
「言ったけど、上の人には言えないと言われた。自分でも『人もいないしな』と思ってしまう…」
「ブラック多いよね」
「なのに『就職したら3年は辞めるな』とか言われるし。ブラックに従えと言われているみたい」
「職場はバイトで持ってるよね」
「安く使って、学生を利用してると思う」
 
 
「ひとり親で子育てしている人は圧倒的に女性が多いよね」
「パートナーがいても男性側が家事・育児をしないからひとり親状態の女性も多い。バイト先の女性も、何人もの子どもをほぼ1人で育てながら親の介護もしてた。残業が多くて『残業は1時間で上がらせて』とお願いしてたけど、なかなか通らなかった。すでに定時を超してるんだよ」
「上司はだいたい男性だよね」
「そうそう。自分も子育てしていなくて『子どもなんか預ければいい』と思っていて、分かってない」
「正社員も男性が多い」
「子どもの学校行事とかはお母さんが出る。夜の会議も男性は出られるけど女性は出られない。男性の方が昇進も早くなるよね」
「そして男性ばっかりになる。悪循環」
「少数派だと声を上げても届かないし」
「女性差別がなくなったら、労働環境もかなり良くなるんじゃないかな」
 
 
「飲食やホテルなど観光業でバイトしている人が多いよね」
「新入生も観光に興味ある子が多い」
「でもバイトしてみるととても大変。どこも人手不足で休みも取れない」
「観光施設は県外や国外の企業ばかりで、働いているのは沖縄の人。大きな企業で収入はあるはずなのに、バイトの時給は800円切ってたりする。おかしくない?」
「お客さんにはいい企業でも、働く先としては良くない」
「正直、観光業には就職したくないと思ってしまう」
「だから離職率も高くなるし、人手不足も続くんじゃない」
「『若者の離職率が高い』と言われるけど、若者だけのせいじゃないよね」
「働いているのはアジア系の外国人も多いよね。この人たちの給料も安いんだろうね」
「外国人の前に、県内の人が働ける環境にしてくれたらいいのに」
「なんで県内企業が力を付けてくれないんだろう」
 
仕事
■学費のためのバイトなのに授業に出られない。この状況をどう思いますか?
■低賃金や長時間労働で働くことに希望が持てません。どう思いますか?
■県内の観光施設に県外・国外の企業が多いのはなぜですか?
暮らし
■男性知事として、女性の社会進出をどう進めますか?
■中・高生が自分たちで校則を決めることをどう思いますか?

知事になったら
■どの課題から先に解決していきますか?
■みんなの声をどのように集めていきますか?
■集まった声をどのように政策に生かしていきますか?
 
あなたにとって大切なこと
■議員や市長として働くやりがいは何ですか?
■一番大事な人は誰ですか?
父親として
■あなたの子どもがブラックバイトをしていたらどうしますか?
■あなたの子どもと接するときに大事にしていることは何ですか?

 

 
対話が何より大切
選挙前、新聞には選挙の記事がたくさん出ます。それは選挙への関心を高め、少しでも多くの人に投票に行ってほしいから。私たちの社会は、自分たちのことを自分たちで話し合って決めていく「民主主義」で、その根っこにあるのが自分たちの代表を選ぶ選挙です。民主主義でなければ、軍事政権は暴力で、独裁政権は他の人の意見を聞かずに国のことを決めます。
選挙は結果も重要ですが、投票に至るまでに意見を出し合い、自分と違う意見も理解しようと対話するのが何より大切。当選した人は「選ばれたから何をしてもいい」ではなく、落選した人の意見も反映させる努力をしなければなりません。
 
「政治家は悪いことばかりして信用できないし、誰に投票していいか分からない」という人もいるでしょう。でも政治家は投票で選ばれてこそ政治家になれるのです。みんなが投票して自分の望む代表を選ぶことが、権力を持つ人の暴走を止めることにつながります。
 

 
集中する米軍基地
県知事選を前に全国のマスコミが沖縄に集まっています。沖縄の選挙は米軍基地の賛否で揺れるからです。
沖縄には全国の7割もの米軍基地が集中しています。日本には「北朝鮮や中国が怖いから米軍に守ってもらおう」「でも米軍基地を自分たちの所に置くのは嫌だから沖縄に」という考えがあるのです。
沖縄の基地問題は、47都道府県を47人の教室に、米軍基地を1匹の番犬に例えると分かりやすくなります。窓際の席にいる「沖縄君」は、外敵の見張りに適した場所だからとこの番犬の世話を押し付けられていますが、この犬はほえるし、かみつくし、沖縄君は困っている。「番犬が必要ならみんなで面倒を見よう」と提案した沖縄君が、翁長雄志知事です。
 
普通ならみんなで話し合って決めるけど、このクラスでは学級委員長=政府が「外交・防衛は国の専管事項」つまり「番犬をどこに置くかは自分が決める」と沖縄君の意見を聞きません。ネット上で言われるような「沖縄のわがまま」ではないのです。

 

 
命と生活脅かす
沖縄では墜落事故や軍人・軍属による犯罪が戦後ずっと起こり続けています。県民にとっては命と生活の問題なのです。
1995年に少女が米兵に暴行される事件が起き、県民はいよいよ怒り、日米両政府は普天間基地を移そうと決めました。その先が普天間からわずか36キロの名護市辺野古です。ところが配備されるオスプレイの訓練する範囲は200キロにもなるので、拠点を辺野古に移したところで本島周辺はどこに落ちてもおかしくない。危険性は変わらない上、辺野古新基地は普天間にはない軍港や弾薬庫も備えた最新鋭の基地。何かあれば真っ先に攻撃されるので県民の危険はさらに増えます。
 
国は税金を集めて各自治体に配分します。沖縄県の分は政府が一括管理していて、基地を受け入れれば増額、拒否すれば減額するなどお金で締め付けます。沖縄県の自由は制限され、貧困など地域の課題を自分たちで解決するのも難しいのです。

 

 
政策から関心を
選挙の要素には「政局」と「政策」があります。「政局」はどんなグループや人がトップになるかということ。「政策」は子育て支援や町づくりなど「何をするか」の方針です。日本の報道は政局に偏りがちで、候補者側も政策はぼんやりとしたものしか出さない傾向があります。しかし、その人が何をするかを示す政策がなければ有権者は選びようがありません。
候補者は、何を、いつまでに、どのくらい達成するかといった具体的な目標を公約に挙げること。有権者は投票して終わりではなく、当選した人が公約を実現しているかを監視し続けることが大切です。
 
政策は暮らしに直結します。基地問題はじめ貧困問題や働き方など、候補者がどんな政策を打ち出しているのか、関心を持つことから始めるといいですね。

■ 私たちが参加します ■

 
いっちゃん(21)=3年、離島出身。「沖縄のことを同世代と話すのが好き。自分にできることを考えたい」

 
よしみ(20)=3年、本島中部。「沖縄の将来をつくるのは沖縄の人。自分たちで考えたい」

 
もーも(21)=4年、本島南部。「たくさんの人と出会い、話し合って学びを深めたい」

 
かれな(22)=3年、本島中部。「翁長知事が亡くなり、沖縄の問題を自分の問題として考え行動したいと思った」

 
りっちゃん(22)=休学中、本島南部。「自分で考えて選べるよう、知事選のことを勉強したい」

 
りこ(22)=4年、本島中部。「今まで投票してもよく分からず不安だった。同世代の考えも知りたい」

 
かーりー(20)=3年、本島南部。「沖縄で起きていることを『自分ごと』として考え行動できるようになりたい」

 
はーづー(25)=4年、本島南部。「選挙の仕組みをいまいち理解できていない。もっと理解を深めたい」

 
若者の皆さん、県知事選への疑問や要望を「りゅうちゃんねる」までお寄せください。
アクセス方法
下記のリンクからLINE@「琉球新報」を友だち追加して、質問をお寄せください。
https://line.me/R/ti/p/%40rbt4298m
 

© 株式会社琉球新報社