危険運転罪適用困難か 東名・夫婦死亡、監禁致死傷罪を追加

 神奈川県大井町の東名高速道路で昨年6月、あおり運転を受けて停止させられた一家4人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪で起訴された男(26)の裁判員裁判に向け、横浜地裁が危険運転罪の適用に否定的な見解を公判前整理手続きの中で示していたことが7日、分かった。初公判は年内にも開かれる見通し。

 関係者によると、検察側は8月、車線上に一家のワゴン車をとどまらせたとする監禁致死傷罪を予備的な主張として付け加えるため、訴因変更を請求。危険運転罪が成立しないと判断されれば無罪となるため、これを回避するための措置とみられる。地裁は今月7日までに訴因変更を認めた。

 事故は昨年6月5日夜に発生。起訴状などによると、被告は静岡市の女性=当時(39)=一家のワゴン車に妨害行為を繰り返し、進路を車でふさいで停止させた。降車した被告がワゴン車に詰め寄った際に後続の大型トラックが突っ込む事故が起き、女性と夫=同(45)=を死亡させ、娘2人にけがを負わせた。

 危険運転罪はこれまで、車が走行中の事故に適用するのが一般的で、停止後に誘発した事故に適用する事例は珍しい。県警は過失致死傷容疑で被告を逮捕したが、地検はより罰則の重い危険運転致死傷罪で起訴。被告の再三にわたる進路妨害が危険運転に該当し、停止後の事故との因果関係も一連の流れとして認められると判断した。

 これに対し弁護側は「法律を拡大解釈している」と反発。被告の危険運転行為と停車後に起きた追突事故は一連のものではなく、因果関係はないとして「過失運転致死傷罪の限度で成立する」と主張していた。

 監禁致死傷罪の最高刑は危険運転致死傷罪と同じ懲役20年。過失運転致死傷罪の最高刑は懲役7年になる。監禁致死傷罪の認否について、被告の弁護人は「被告とも相談して検討したい」としている。

横浜地裁

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