【自民総裁選】神奈川の党員「安倍政治問う論戦を」「物言えないのはよくない」

 安倍晋三首相と石破茂元幹事長の一騎打ちとなった自民党総裁選。国会議員票で圧倒する安倍首相の優勢が伝えられるが、党員票を持つ神奈川県内の自民党員の思いは議員とは異なり、決して「安倍1強」ではない。「アベノミクスで暮らしは豊かになったのか」「憲法改正をどう考えるのか」。5年8カ月の“安倍政治”と今後の国の在り方を巡り、活発な政策論争を期待している。

 「最近の首相としては、よくやっているのではないか」。横浜市金沢区に住むNPO法人役員の男性(73)はトランプ米大統領との関係構築など、安倍首相の外交面の取り組みを高く評価する。「党員の多くが安倍首相支持の流れではないか」とみる。

 一方、機械加工会社を営む秦野市の女性(78)は「アベノミクスは大企業に良かったのかもしれないが…」と首をかしげる。業績は業界全体で良くなっていないと感じる。職人の高齢化が進む現状に危機感を抱き、石破氏に中小企業のための政策実現を望む。

 石破氏が選挙戦のキャッチフレーズに掲げるのは「正直、公正」。森友・加計問題に対する安倍首相の姿勢を「不正直、非公正」と問題視する党員は多い。

 横須賀市に住む会社員の女性(40)は安倍首相が国会で説明責任を果たしていないと感じている。「はっきりしない問題も多い中で、続投していいのか。(安倍首相の)これまでの功績はすごいが、うそつきだ」と手厳しい。

 藤沢市で清掃会社を経営する男性(53)は「森友・加計問題によって国民や消費者が直接困ったというわけではない」と考える。ただ、安倍首相の続投を望みつつも「拮抗(きっこう)する政治家がいないと、党全体が緩む。独裁的な体制にならないかと不安もある」。

 安倍首相は改憲を目指し、憲法9条に自衛隊の存在を明記する案の臨時国会への提出に意欲を見せる。一方、石破氏は自衛隊について「国民の圧倒的多数は合憲と認めている」と述べ、9条改憲の緊急性を否定。所得増大などが最優先課題と主張する。

 党員の関心が高いのも憲法論争だ。拙速な結論ではなく、議論の積み重ねを求める声が強い。

 川崎市中原区に住む主婦(74)は憲法に関する勉強会に参加してきたが、憲法論議は「少し難しいというのが本音。より丁寧な説明が必要になる」と感じている。小田原市に住む団体職員の男性(54)も憲法が党内で議論されることに期待する。「(憲法の問題は)国民が決めることになる。激動の世界の中で日本はどうあるべきか、分かりやすくみんなが議論できる状況をつくっていくべきだ」と語る。

 北海道で震度7を観測した地震の影響で共同会見は延期されたものの、6年ぶりの選挙戦。自民党の政権復帰後、初の本格的な党内論争となる。

 団体職員の男性は、発言が注目される小泉進次郎筆頭副幹事長(衆院11区)ら若手議員に期待する。求めるのは、党内からさまざまな意見が出て、議論が活発になることだ。自由闊達(かったつ)に切磋琢磨(せっさたくま)したかつての姿を振り返り、「(党内で)物が言えないのはよくない。物が言える環境づくりこそが必要。それがあって初めて、すべてが成り立つ」。

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