【MLB】6年前の“大谷伝説”、カナダメディアが回顧も…「最高の投手はフジナミだった」

2012年AAA世界野球選手権での大谷翔平(左)と藤浪晋太郎【写真:Getty Images】

2012年の世界選手権で日本と対戦したカナダ選手が回顧「この男はとんでもない」

 右肘靭帯の新たな損傷が明らかになったにもかかわらず、8日(日本時間9日)敵地ホワイトソックス戦で今季18度目のマルチ安打を記録した大谷翔平投手。二刀流ながら、2006年の城島健司氏を抜き去る日本人メジャー1年目トップの19号を放つなど勢いは止まらない。“悲報”直後に強靭なメンタルを見せつけた圧巻の活躍に周囲は驚きを隠せなかったが、カナダメディアは大谷が18歳で残した“伝説”について振り返っている。

 7日(同8日)のホワイトソックス戦の試合前には、今季終了まで打者として出場を続ける考えを明かした大谷。二刀流継続にも強い意欲を示した。今後も活躍が期待される大谷について、「カナダがショウヘイ・オオタニと対決し、勝利した時」と特集したのは「ヤフー・カナダ・スポーツ」。2012年8月31日、韓国・ソウルで行われたAAA世界野球選手権で、カナダは日本と対戦。1万500人収容のスタジアムで観衆わずか125人だったというが、そこには未来のスーパースターがいた。

「野球界が恋に落ちた二刀流の天才は背の高い18歳に過ぎなかった。だが、彼は一瞬で印象を植え付けた。カナダ代表は映像の前で釘付けになったのである。彼らはキロ表示をマイルに変換しようと慌ただしさを見せていた」

 記事ではこう伝えている。当時は花巻東高3年生。しかし、その剛速球はカナダ代表に衝撃を与えた。当時のカナダチームで三塁を守っていたジェシー・ホッジス三塁手は「このノッポでヒョロっとした右腕を見た時のことを今でも覚えている。いずれにしても大したことはないだろうな、と。レーダーガンはキロ表示だったんだけど、150キロを記録していたんだ。そこから、みんなで考え始めたんだ。『今何が起こっているんだ?』とね」と振り返ったという。

 一塁手のブレット・シダルも若き日の大谷の第一印象を忘れられないようだ。「この大会で他のピッチャーは130キロぐらいの速球だった。でも、彼はそれを超えていた。145キロとか150キロだった。我々は気付いたんだ。この男はとんでもないことを成し遂げているんだな、と」。映像越しに伝わる18歳の大谷のインパクトは強烈だったが、カナダ代表は若き侍ジャパンのエースは別の選手と見ていた。阪神の藤浪晋太郎投手だ。

「当時の彼らの最高の投手はシンタロウ・フジナミという名前だった」

「当時の彼らの最高の投手はシンタロウ・フジナミという名前だった。結果とパフォーマンスの両面でね。彼は右腕で日本プロ野球のドラフト1位の選手だったんだ。彼は日本のロースターで本物のエースだった。4つの球種を持ち、球速は92、93、94マイル(約148、149、151キロ)に到達していた。大会でも彼らは多くのイニングを投げさせていた。オオタニは伸び代抜群の投手という感じだったよ」

 記事の中でこう振り返ったのは、当時のカナダ監督のグレッグ・ハミルトン氏。カナダ代表では、投手としては大阪桐蔭高校で春夏連覇を果たした藤浪の方が「格上」と評価していたという。ただ、実際にカナダ戦の先発マウンドに上がったのは藤浪ではなく、大谷だった。

 現在、タイガース傘下のマイナーでプレーするジェイコブ・ロブソン外野手は1番打者で大谷と対峙。「あの打席のことは、はっきり覚えているよ。彼と対峙したのは僕が最初だったんだ。1番打者で四球だった。凄いボールを投げていたよ」と振り返っている。一方で、大谷はクリーンナップで打席に入っていたが、カナダで先発を務めたライアン・ケロッグは「みんな高校では(二刀流を)やっているけれど、代表レベルでは誰もいない。あんな投球ができて、クリーンナップも打てるぜ、っていうのは本当にスペシャルな才能だよ」と、その印象について語ったという。

 大谷はこの試合、失点を重ねて降板となったものの、その後レフトの守備についた。ホッジスはこれについて「マウンドからレフトに行ったヤツなんて見たことがないよ。あんなことは13歳ぐらいでしか起こらないんだ」と記事の中で呆れ気味に語っている。

 日本はこの試合、延長10回にホッジスに決勝弾を許して敗戦。だが、“大谷伝説”を目の当たりにしたハミルトン元監督は特集の中で「あんな選手はほとんど見ることはないんだ。彼が日本でやり遂げたこと、そして、野球の最も高いレベルで実現していることに対して、私は驚きはないんだ」と話している。米国で巻き起こしている二刀流センセーションにも納得の様子だった。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2