新住民の親子 交流深めた夏 開成町、母親ら居場所づくり

 小田急線開成駅(神奈川県開成町吉田島)東口の大規模マンションに住む母親らでつくる「ASOBI(あそび)隊」が夏休み中、子どもたちにいろいろな遊びや、学びを提供する居場所づくりに取り組んだ。同駅周辺は新たに移り住んだ子育て世帯が多く、親が交流できる場も目指した。「生活が規則正しくなった」「自然にあいさつができるようになった」。メンバーはひと夏の活動を終え、子どもたちの成長を実感している。

 夏休みも終わり間近の平日午前9時。駅前の自治会室に小中学生20人が続々と集まってきた。最初は学びの時間。友達と一緒に夏休みの宿題をしたり、歴史漫画を読んだり、思い思いに過ごす。

 図書ボランティア経験のあるメンバーによる絵本の読み聞かせや、簡単な英会話のレッスンの後、この日のメイン企画「ロボット制作とプログラミング」が始まった。

 近くのロボット教室がボランティアとして参加し、子どもたちを指南。車輪の付いたロボットがプログラム通りに走り、狙った場所に停止すると、子どもたちは大きな歓声に沸いた。

 「集団活動で協調して行動するようになった」。そう話すのは、孫の小学5年の男児(10)を連れてきた女性(69)だ。

 自身は駅前のマンションに住み、孫は近くの一戸建て住宅。両親は共働きで夏休み中に生活が乱れることが心配だったが、「ここに来れば規則正しい生活ができる。宿題の面でも助かっている」。メンバーとしても運営を手伝い、「自分も役立っているという達成感がある」と笑顔で話す。

 ASOBI隊は、今夏が活動2年目。昨年3月に駅前のマンションに引っ越してきた代表の清水友紀さんが立ち上げた。新しい土地で、頼れる祖父母も知人も友人もいない。長男(11)、次男(7)、長女(3)がいて、「夏休みはどうしようと必死だった」と振り返る。

 同駅東口には大規模マンション6棟があり、約600世帯1400人が住む。西口は一戸建て住宅が並ぶ新興住宅街。同町の人口増をけん引している地域の一つで、清水さんは「同じような悩みの人は絶対にいるはず」とマンションの自治会長に相談し、各戸にチラシを配ったり掲示板に張ったりして参加者を募った。当初は5人以下だったが子どもの口コミで徐々に広がり、今夏は1日平均20人が来るように。運営メンバーも7人に増えた。

 お手玉やだるまさんが転んだなど昭和の遊びをはじめ、卓球、映画観賞、マナー教室、サイクリング、小田原市内の公園まで遊びに行く遠足など…、木曜日とお盆の時期などを除く平日の約20日間、メンバーで考えたさまざまな企画を実施した。「ゲームをして家にこもりがちだった子どもが外に行くようになった」といった声が寄せられ、参加者の母親も自分の時間が持てるようになったという。

 「大変だけど、それぞれの子どもの居場所になり、充実した夏休みになれば」と話すメンバーの一人、伴奏ピアニストの郡田奈津子さん。清水さんは「学校とは違う自由の中で、子どもの視野を広げる学びや遊びを提供する活動を来年も続けていきたい」と話している。

ロボットのプログラミングを体験する子どもたち =開成町吉田島

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