どうなる就職戦線

 10年ほど前、就職活動を手ほどきするという「就活塾」を東京で取材したことがある。企業の採用試験の面接で何を質問されたのか、そこを受験したことのある人から情報を集め、傾向を読み取る。実に細かく▲さらに就活前の大学生たち、つまり「塾生」と模擬面接を何度も重ねる。就活には情報収集の力で臨む時代なんだな。そう思った記憶がある▲先々、就活の待つ人には、そうした採用試験の情報よりも目下、気になる話だろう。経団連の中西宏明会長が、大手企業の採用活動の日程を定める「就活ルール」の廃止を、と表明した。2021年卒業の学生から対象にしたいという▲このところ「3月に説明会解禁、6月に面接解禁」だが、日程のルールは過去、ころころ変わっている。実際には解禁前から採用活動に入る大手も数知れず、ルールは形ばかりとされてきた▲とは言っても、ルールなしでは人材の奪い合いが激しくなる一方だろう。採用活動はいくらでも前倒しされ、学生は学業どころではなくなる、と心配する向きがある。新卒をまとめて採用する雇用の慣例を見直すいい機会だ、とみる向きもある▲学生たちが勉強そっちのけで、採用の動きを察知するのに心を砕く-とすれば、情報収集の力がますます問われて、大変な就活になる気がする。(徹)

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