特殊鋼棒線、需給ひっ迫深刻化 相次ぐ災害影響

 平成30年7月豪雨、台風21号、平成30年北海道胆振東部地震と大規模災害が立て続けに起きたことで、特殊鋼棒鋼・線材の国内需給のひっ迫度が一段と深刻化している。被災地域には高炉、特殊鋼電炉の主力製造拠点が複数あり、大きな設備被害はないが、停電影響など生産への支障が少なからず生じている。安定稼働を前提に需給タイト化の加速が懸念されていた状況だけに、市場関係者の危機感は強い。需要業界においても製造業全般を俯瞰した慎重な対応が求められる局面といえる。

 特殊鋼棒線需給はかねてタイトな状況が指摘されてきたが、夏場から一段とタイト化している。国内高炉、電炉各社は納期調整と毎月の受注引き受けに上限枠を導入するなどぎりぎりの操業を継続し、既存顧客への大幅な受注調整や一部辞退に踏み込まざるを得ない状況。在庫圧縮でしのいできたデリバリーも限界に達しつつあり、中継地の製品在庫の適正化もままならない綱渡りの供給事情を各社が抱えている。

 市中在庫でもベースサイズを中心に欠寸が散見され、店売り引き受けカットやヒモ付きを含めたロール呼称変更の動きが顕在化する中で、「普段は引き合いのない同業者からもまとまった引き合いが寄せられる」(扱い筋)との声が8月から聞かれていた。市中在庫のタイト感やアンバランスさは今後一段と強まることが予想される。

 需要は自動車関連だけでなく建機・産機・工作機械関連や高力ボルトなど土木・建築関連も堅調で、いずれも特殊鋼棒線の需給タイト感が強い。

 メーカーが定修のスケジュールを無理に変更すれば、新たな設備トラブルにつながりかねない。適正価格水準の実現を含めて、特殊鋼棒線の価値が改めて認識されるべき局面といえそうだ。

© 株式会社鉄鋼新聞社