【北海道地震】鉄鋼各社、復旧進む J条豊平、あす製鋼再開

 北海道で震度7を観測した地震の影響を受けた鉄鋼各社で事業活動を再開する動きが進んできた。広範囲にわたる停電の影響がほぼ解消し、10日までに高炉や電炉メーカー、鋼材流通各社が相次いで工場の操業を再開した。一方、停電の影響で依然として操業を休止している企業や、道路の陥没などの影響で製品の陸上輸送などに影響が残っているケースもある。企業によっては今後、業績に影響が及ぶ可能性もありそうだ。

 新日鉄住金の室蘭製鉄所(北海道室蘭市)は9日午前8時までに全設備を順次再稼働させた。6日午後8時ごろに製鋼工場を再稼働させたのに続き、7日午前5時ごろに第2高炉(炉容積2902立方メートル)の送風を再開。線材、棒鋼ミルは8日午前11時ごろに立ち上げた。

 日本製鋼所・室蘭製作所(室蘭市)は、10日は各工場の点検作業を行った。北海道電力は苫東厚真発電所の完全復旧に1週間以上要する見通しとしており、各方面に節電対応を要請している。日鋼・室蘭はきょう11日にはより具体的な操業見通しを立てられそうだが、当面は苫東厚真発電所の完全復旧を待ちながら電炉以降の操業度を落とした生産とする。製品のリードタイムが長いため、顧客へのデリバリーに支障はないとみられる。

 三菱製鋼室蘭特殊鋼・室蘭製作所(室蘭市)は地震発生・停電後に全ラインの操業を休止していたが、8日に精整、圧延工場の生産を順次再開した。製鋼工場は被災箇所の部品交換や点検を行っており、11日夜間に生産再開の予定。

 JFE条鋼豊平製造所(札幌市)と清水鋼鉄苫小牧製鋼所(苫小牧市)は2社とも8日中に通電し、設備点検で大きなトラブルや被害は確認されなかった。両社とも節電要請に応じながら、あす12日夜から製鋼の操業を再開する予定としている。

 7日に苫小牧製鋼所に入った清水鋼鉄の清水孝社長は「今回は地震発生時にスムーズに設備の稼働を止めることができた。58時間という長時間の停電にもかかわらず、スムーズに復旧作業が進んでいる。日ごろのBCPや訓練の成果もあり、全社員が一致団結して全面復旧へ向けて取り組んでいる」と語った。

 震源地に近く震度5強を観測した苫小牧市の阿部商事(本社・苫小牧市、社長・阿部明弘氏)は通電した7日から復旧へ向けた動きを開始した。同社は各種鋼材販売のほか、苫小牧市内に2カ所の給油所を設けて石油製品やガス類・燃料などを販売している。人的・物的被害は皆無で、給油所も早期に営業を開始し、苫小牧市民の足の確保に尽力。10日には鋼材関係のオーダーも入り始め、対応を進めている。

 震源に近い苫小牧営業所や千歳支店、札幌支店(小樽市銭函)などの本支店網を持つ栄和鋼業(本社・登別市、社長・宮澤智考氏)も、一部でOA機器の破損や前日の台風による倒木に伴う支障が発生し、各店ともに停電の影響はあったものの人的・物的被害はない。10日は客先の被害状況を順次確認しながら供給対応を進めている。

 全道に支店網を展開する今井金商(本社・札幌市、社長・河野真一氏)は、札幌の本社・本店のほか震源に近い苫小牧支店をはじめ、旭川・釧路・帯広の各支店ともに被害はなかった。札幌市白石区でカラー鋼板関係の在庫や加工を行っている米里建材センターでは地震による揺れで一部のコイルが散乱し、シャッターが破損するなど軽微な被害が発生した。しかし、通電が開始した8日朝には社員がコイルの整備や各種設備の点検を開始し、早々に通常体制に戻っている。

 北海道地区最大手の溶融亜鉛めっき加工業者で鋼構造物製作(Hグレード)なども手掛ける双葉工業社(本社・札幌市東区、社長・阿部司氏)は、長時間の停電でも溶融亜鉛めっき加工、鋼構造製作部門を含めて被害はなかった。地震発生前日に北海道を襲った台風21号に備え、石狩市(震度5弱)の各工場ではめっき槽などにふたをかぶせ、自家発電機を配置していた。地震の揺れで溶融した亜鉛や各処理槽の薬液がこぼれることもなく、10日には各設備の点検後、溶融亜鉛めっき加工や鋼構造物製作をともに開始している。

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