【新日鉄住金グループ企業の〝今〟】〈日亜鋼業〉線材加工製品の総合メーカー ソリューション営業、製販技一体で展開

 日亜鋼業は、今年で創業110周年を迎える線材加工製品の総合メーカーで、めっき線業界の国内トップメーカー。1908年に創業し、52年に当時の日亜製鋼から現社名で分離独立、61年に業界初の株式上場、87年に東証・大証一部への指定替えを果たした。

 日亜鋼業本体は、高耐食性の多彩なめっき商品メニューを誇る普通線材製品、建築用の高力ボルト製品、耐食性と防護性に優れる獣害防護柵などの三次加工製品を得意としている。また、特殊線材製品については、同社が平線を主体に手掛けるほか、2007年に子会社化したジェイ―ワイテックスがめっき鋼線やより線、硬鋼線、鋼索などを担い国内外市場で強い存在感を示している。さらに、2010年代前半には中国とタイにめっき線の会社を設立し、当該拠点から世界各地域への輸出も行うなど、グローバルに事業を展開中。

 日亜鋼業の強みは、全国の営業拠点網を生かした需要家へのきめ細かな営業、東西製造拠点からの短納期デリバリーに加え、三元合金めっき線『タフガードシリーズ』や極厚めっき、カラーなど高度なめっき技術に支えられた高付加価値の商品群にある。また、13年から4年かけて、本社工場のリフレッシュ工事と全社システム刷新の大規模戦略投資を実施。「生産性の大幅な向上や一層の品質・歩留改善などを実現した。トレサビリティ拡充による品質保証体制強化も併せ、業界屈指の供給体制に一段と磨きをかけた」(国峰社長)。

 同社は、養殖向けや製紙向けなどの用途開拓や補強土壁『ハイパープレメッシュ』の需要家との共同開発をはじめ、数々の需要開拓を推し進めてきた歴史と伝統を持つ。「営業と技術サービスの連携を軸に、広範なお客様のニーズを捉えながら、製販技一体のソリューション営業を積極的に展開している」(同)。特に戦略分野と位置付ける、堅調な建築向け、リピート性の高い製造業向け、他素材の代替を含めた農・畜産・水産業向けの需要開拓に注力しており、最近の事例では、様々な容器の部品、果樹園や鶏舎・豚舎の資材などにも手を広げている。新商品についても、平線をひし形に編んで強度を向上させた『フラットワイヤーフェンス』用のめっき線に加え、塩害・中性化からコンクリート構造物を守るめっき異形鉄筋『サンメッ筋』を開発し新日鉄住金や顧客の協力を得て販売を開始した。

 獣害対策資材でも、簡易型獣害防護柵『フォレストクロスフェンス』を用いた林務向けの拡販を実行中であり、さらに溶接金網製の獣害柵の下部を低コストで簡易に補強する獣害防護柵『アンダープロテクトフェンス』を開発し販売開始。そのほか『捕リックゲージ』などの捕獲檻罠も手掛けている。

 既存市場の掘り起こしと新規市場・顧客の開拓などで昨年度は約80件の拡販実績に結び付けた。こうした販売数量の拡大に販価改善やコスト削減を併せ18年3月期は2年連続の増収増益を達成。「昨年開設したショールームもお客様や流通業界などから好評を博している。今後とも需要開拓に向けてたゆまぬ努力を積み重ねていきたい」(同)。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=兵庫県尼崎市

 ▽資本金=107億円(新日鉄住金出資比率22・6%)

 ▽社長=国峰淳氏

 ▽売上高=283億円(18年3月期連結)

 ▽主力事業=普通線材製品、特殊線材製品、高力ボルト製品、獣害総合対策資材などの製造・販売

 ▽従業員数=778人(18年3月期連結)

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