【侍U-18代表】今やりたいことは「練習です」 根尾昂、驚きの向上心と“職人”の空気

侍ジャパンU-18代表・根尾昂【写真:Getty Images】

投手としても自己最速を更新し150キロをマーク

 10日まで宮崎市内で行われていた「第12回 BFA U18アジア選手権」。2大会連続での優勝を狙った侍ジャパンU-18代表はオープニングラウンド第3戦で韓国に、スーパーラウンド初戦でチャイニーズ・タイペイに相次いで敗れて決勝進出を逃した。3位決定戦で中国に圧勝し、3位以内に与えられる、来年に韓国・釜山で行われる「第29回 WBSC U-18ワールドカップ」の出場権こそ掴んだものの、悔しい結果に終わった。

 甲子園で一躍脚光を浴びることとなった金足農の吉田輝星や春夏連覇を達成した大阪桐蔭の藤原恭大や柿木蓮、中川卓也、小泉航平、報徳学園の小園海斗と錚々たる顔ぶれが集結した侍ジャパンU-18代表だったが、その中でも存在感を際立たせていたのが、藤原や柿木とチームメートである大阪桐蔭の根尾昂であった。

 根尾の凄さはこれまでも様々なところで語られてきた。名門・大阪桐蔭の主軸を任されながら、遊撃手としての守備力も抜群。さらには、投手としても一級品の潜在能力を持ち二刀流、いや“三刀流”のプレーヤーである。ドラフト1位確実と言われる能力だけでなく、中学時代には学校の成績がオール5であった秀才ぶりも幾度となく伝えられている。

 その根尾。アジア選手権でも、その力の片鱗を見せつけた。初戦の香港戦。格下の相手ではあったものの、サイクルヒットを放ち5打数5安打5打点の活躍。投手としては2試合に投げ、韓国戦で自己最速を更新する149キロをマーク、3位決定戦の中国戦ではこれをさらに更新して150キロを記録した。

「バッティングも、ピッチングも、守備も全てです」

 ただ、大会期間中、根尾の口からは満足感を示す言葉はほとんど発せられることはなく「まだまだ」「技術不足」といった向上心に溢れたコメントが並んだ。大会が終わった10日の中国戦後には「ミスショットがまだまだあるんで、代表はこれで終わりますけど、それぞれがチームに戻って課題を克服できるようにやっていこうと思います」「悔しさも正直残っていますし、勝たないといけない試合を落とした大会だった。課題も明確になってますし、この悔しさを次に生かしてやっていかないといけない」と語った。

 そして、最も驚かされたのが、次の発言だった。7月から大阪府大会が始まり、春夏連覇を果たした甲子園、そして休む間も無く侍ジャパンU-18代表の活動と、約2か月にわたって怒涛の日々を送ってきた。間違いなく疲労もあるだろう。30日からは福井国体も控えている。

 つかの間の休息を欲しても何らおかしくないのだが、中国戦直後、インタビュアーから「今やりたいこと」を問われた“根尾さん”は「練習したい」と即答した。「バッティングも、ピッチングも、守備も、全てです」と話し、アジア選手権を通じた感想としても「技術不足が一番だと思いますし、打たないといけない投手に対して打ち損じをしていましたし、技術不足だと思います」と語っていた。

「日本の野球とは違う野球を経験させていただいて、日本よりも広い野球というか、ベースボールというのを経験させてもらった。その中で勝てなかったというのはあるので、次は絶対に勝てるように、今大会の経験を生かしてもっともっと上のレベルでプレーできるようにやっていきたいと思います」と根尾は語る。練習中に1人、仲間の輪を離れてスイングのチェックを行う姿は18歳にして“職人”の雰囲気すら醸し出す。根尾昂。この経験を糧にして、もっともっとスケールの大きな選手となっていくだろう。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2