ふるさと納税、高額返礼品規制へ 神奈川県内で歓迎と困惑

 「過熱競争による不公平感がなくなる」「基準の根拠が分からない」-。ふるさと納税での高額返礼品を規制する政府の動きに対し、神奈川県内の自治体からは歓迎や戸惑いの声が上がった。神奈川は全国的に税の流出が大きいだけに、実効性のある制度改正を望む意見も相次いだ。

 総務省によると、今月1日時点で寄付額の30%超となる返礼品を贈っていた県内自治体は、小田原、厚木、伊勢原、南足柄市と中井、大井、松田、山北、愛川町の9市町。人口減などで財政難に直面する県央・県西部の自治体が占めた。

 神奈川新聞社のまとめでは、寄付額に対して最も高い割合の返礼品を贈っていたのは40%台後半の大井町で、南足柄市、山北町も約45%と回答。大井町の返礼品の平均は30%台後半といい、足柄牛のローストビーフや、町内の洋菓子店「モンテローザ」のケーキ、町内に開発拠点を置くNEC製の液晶ディスプレーなどを贈っている。

 9市町以外でも、寒川町が3月に25日間限定で寄付額の50%に相当する旅行券を贈り、2017年度の寄付額が前年度の149倍に急増したケースもあった。

 山北町の担当者は「周辺自治体の返礼割合が高く、うちだけ下げると寄付金が回ってこなくなる恐れがあった」と返礼品競争の過熱ぶりを指摘し、「他の自治体も下げるなら、同じように下げる」と説明。従来の通知による要請では法的な拘束力がなかったため、法制化を目指す動きを歓迎する。一方、寄付額の30%以下という基準には「根拠が不明」「送料や消費税の扱いが不透明だ」と指摘する自治体の担当者もいた。

 また、今月1日時点で地元産以外の物品を取りやめていないのは、逗子市と寒川、山北町の1市2町。市町内の商工業者が取り扱っていたり、健康増進など重点施策と重なっていたりする基準で用意したほか、交流協定を結ぶ県外自治体の特産品を返礼品としてきたが、寒川町の担当者は「地元と関係なく、数合わせやにぎやかしで用意した返礼品もあった」と明かした。

 1市2町は神奈川新聞社の取材に対し、いずれも「見直す」と回答。ただ、逗子市の担当者は「どこまでが『地場産品』となるか、線引きが難しい。すべて市内で作ったものとなると、小さな自治体では返礼品が限られてしまう」と懸念する。

 ふるさと納税に伴う18年度の住民税の控除(減収)額は、都道府県別で神奈川は257億円の減収となり、東京の646億円に次いで多い。寄付者が住む自治体は税収が減るため、都市部から地方への税収移転が指摘されており、「税の流出など地方自治の観点から問題が多く、制度自体の廃止を検討してほしい」と語る担当者も。伊勢原市の担当者は「制度の趣旨に沿って正直に取り組んできた自治体が損をしないよう実態を再調査し、実効性のある制度改正をしてほしい」と注文した。

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