「買い物の足」発車 秦野市と栃窪住民が協力 初の買い物支援モデル事業

 秦野市は、渋沢丘陵に位置する同市栃窪の住民と協力し、初の買い物支援モデル事業「とちくぼ買い物クラブ」の試行を今月から始めた。住民に市所有の7人乗りワゴン車を運転してもらい、燃料費を負担する。利用者が増えるようであれば増便も検討する。市と地元自治会は地域と店舗を結ぶ「買い物の足」としての役割に期待を寄せている。

 昨年10月、栃窪を含む西地区自治会連合会から市に移動販売車導入の要望が出された。市は今年2月、連合会を組織する18自治会に買い物についてのアンケートを実施。「商品を見て買い物をしたい」との回答を多く得た。

 そのため初期投資を要し、採算を合わせることが難しい移動販売車より、公用車を貸し出す事業の実施を決めた。モデル地区として、中井町との境に位置し、今年3月末時点で65歳以上の住民の比率が50・3%と高い栃窪を選んだ。栃窪は96世帯が自治会に加入し、バス路線がない。坂が多い上、スーパーなどがある小田急線渋沢駅周辺まで約2キロの距離がある。

 ワゴン車は住民がよく利用するスーパーなど2、3店舗をルートとする。毎週水曜日の午前10時出発で、前日までに自治会長か副会長に連絡した住民が無料で利用できる。12日は車を持たなかったり、1人暮らしをしたりしている住民4人が自治会館と近くの広場に集合。自治会長の土田正幸さん(71)の運転で、約2~4キロ離れたスーパーと農産物直売所の計3カ所を回った。

 初めて参加した1人暮らしの主婦(64)は、普段は市外に住む娘の車かタクシーで買い物に出ており、「娘も子育てで忙しいので助かる」と話していた。

 住民からは「話し相手がいて楽しかった」「重い荷物で大変だったが、車があって良かった」などの声も聞かれた。土田さんは事業について「利用者から継続してほしいとの声もあり、できるだけ続いてほしい」と話していた。

 11月30日まで運行し、市と自治会で利用者数や利用回数を調べ、継続を協議する。市は「継続には地域に合った形で進める必要があり、自治会と方法を話し合いたい」(高齢介護課)としている。

「とちくぼ買い物クラブ」のワゴン車に乗り込む地域住民=秦野市栃窪

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