芥川の貴重な品知って 藤沢で直筆資料展示

 芥川龍之介が少年時代に編集した回覧雑誌など、芥川直筆の資料を紹介する企画展が、藤沢市の鵠沼郷土資料展示室(鵠沼市民センター内)で開かれている。芥川が晩年の一時期を過ごした鵠沼で見つかった資料で、めいに当たる市民(故人)がかつて市に寄贈した。主催する同室運営委員会は「貴重な品々が藤沢にあることを知ってもらえれば」と来場を呼び掛けている。

 資料はもともと、芥川のおいで文芸評論家の葛巻義敏さんが所有。都内の自宅が火災に遭った葛巻さんは焼失を免れた資料を携え、鵠沼に住んでいた妹・左登子さんのもとへ身を寄せた。

 1985年の葛巻さんの死後も資料は左登子さんが保管。その後、96年に市文書館に寄贈され、存在が明らかになった。今回の展示では、このうち約300点ほどの資料をコピーで紹介している。

 回覧雑誌とは、複数人が原稿を持ち寄り一冊にとじて回し読みする雑誌で、明治から大正にかけて文学少年の間で流行した。芥川が高等小学校時、自ら編集長となって手掛けた回覧雑誌「日の出界」も展示され、芥川少年の文学的な素養や志の高さを伝えている。

 このほか、中国視察の様子が描写された新聞記者時代の社員手帳や、未発表文を下書きした自筆ノート、左登子さんに贈った傘のイラストなども掲示した。

 また、芥川の資料展示に合わせて、鵠沼ゆかりの文人にスポットを当てたコーナーも設置。風光明媚(めいび)な鵠沼には、芥川のほか、武者小路実篤、志賀直哉、与謝野晶子、谷崎潤一郎ら多くの文士が旅館に滞在して文筆活動にいそしんだ。

 同委員会の内藤喜嗣副委員長は「鵠沼を舞台にした芥川作品も多い。偉大な文人と鵠沼との関わりや一級の資料が鵠沼で発掘された事実を多くの人に知ってもらいたい」と語っていた。

 1月15日まで。午前10時から午後4時まで。月曜、年末年始休館。問い合わせは、同市民センター電話0466(33)2001。

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