古民家 改修して宿に 「小値賀の暮らし体験を」

 東京から長崎県北松小値賀町に移住した長谷川雄生(ゆうき)さん(33)は妻の沙織さん(31)、友人で米国人のブレット・ラスムッセンさん(36)とともに、同町柳郷にある築100年以上の古民家の改修に取り組んでいる。来年4月に宿として開業することを目指しており「昔ながらの小値賀の生活が体験できる場にしたい」と意気込む。
 雄生さんは新上五島町出身。熊本大を卒業後、東京の建設コンサルタント企業に就職し、地方のインフラ整備に携わってきた。自身が主体となって地方でまちづくりに取り組みたいとの思いが湧き上がり、またコンビニなど便利さに頼った都会の生活にも疑問を抱いたため、2014年から山梨県や本県などを旅して移住先を探した。小値賀町を初めて訪れて民泊体験をした際に、住民のもてなしの温かさに心ひかれたという。
 総務省の事業で、民間企業の社員を地方公共団体に出向させ地域の課題解決に生かす「地域おこし企業人」の制度を知って、自ら役場に売り込んだ。17年4月、会社から出向する形で同町に採用され、町内にある空き家の調査や維持管理に関する業務にあたっている。
 改修している古民家は木造平屋、床面積は約179平方メートル。町外に住む所有者から借り受け、昨年10月に作業を始めた。
 雄生さんは宿泊客に、自然を身近に感じ、魚をさばいて食べたり、まき風呂を沸かして入ったりするような昔ながらの小値賀の暮らしを体験してもらおうと改修を進めている。腐食した柱や梁(はり)の付け替えや水道工事などは専門業者に外注したが、それ以外は休日や仕事の合間に進めている。3人で床板を張り替え、外壁も土をこねて塗り直した。
 沙織さんは「(改修は)新鮮な体験で楽しい。木や土などでできた家はいつか自然に返ることが理にかなっている」と話す。外国語指導助手(ALT)として同町に赴任し、現在は移り住んでいるラスムッセンさんは独学で家造りを学び「こうした伝統的な技術が消えていく中、継承していくことも意義がある」と手応えを感じている。
 雄生さんは「今後も空き家を活用して、多くの人の挑戦の受け皿となるような新たな場をつくりたい」と展望を語る。

古民家の改修に取り組む(右から)長谷川雄生さん、妻の沙織さん、ラスムッセンさん=小値賀町柳郷
改修中の古民家の内観と雄生さん

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