金属行人(9月14日付)

 このところ食缶を取り上げた記事や番組を目にする機会が増えている。健康志向、アウトドア、防災…テーマはさまざまだが、どれも日常生活になじみのあるシーンでの登場とあって、視聴や購読後にインターネット上の交流サイト(SNS)で早速に試した写真を掲載する人たちも少なくない▼消費者の捉え方一つで、こうも印象が変わるものかとうなずける。就業する女性や共働き夫婦の増加で調理時間を短縮する傾向にあったり、各地で相次ぐ自然災害で備蓄用に食料品を買い込んだり。どれも他人事ではないから、ついつい実践してしまう▼キャンプや山登りを楽しむ人が増える中、山頂やテントに持ち込んだ食缶を炭火やバーナーで少し温めてから口にすると、これまた格別の味。手元にあるだけでさりげない演出につながり、中に詰まっている内容物だけでなく容器としての存在感もぐっと高まる▼消費者の志向はいつ、どういうきっかけで変化するかはなかなか読みづらいところ。どれだけの規模で続くかは定かではないけれど、特定の階層に食缶のファンがいることは確か。一度つかまれた胃袋はそう簡単に手放されまい。さて読者の皆さんも手にしてみてはどうだろうか。

© 株式会社鉄鋼新聞社