危険空き家 代執行準備 長崎市、本年度補正に予算案

 長崎市は、倒壊の恐れが極めて高く、危険な状態にある空き家について、所有者が命令に従わない場合、市が撤去をする行政代執行の手続きを進めている。本年度一般会計補正予算案に450万円を提案。県住宅課によると、実際に代執行されれば県内で初のケースとなる。
 空き家は倒壊や害虫の発生、ごみの不法投棄、放火などの懸念があるなど社会問題化している。国は2015年、空き家対策特別措置法を施行。自治体は老朽化を確認した空き家を「特定空き家」と定め、所有者に撤去や修繕を「助言・指導」「勧告」「命令」し、応じない場合、行政代執行できる。費用は自治体が所有者に請求する。
 市によると、特定空き家は、7月末現在で417件把握。17年までの3年間で指導296件、勧告4件、命令はゼロだった。
 今年、市は9月までに命令を2件出している。このうち同市香焼町の木造2階建て空き家は台風7号の影響で2階部分が損壊し隣家に瓦などが飛散した。所有者に対し指導、勧告したが改善されず、命令にも応じなければ代執行する方針。
 市民の生活を守るための最終手段としての代執行だが、市は「本来であれば所有者に管理の責任がある」とする。自主的に解体してもらうため市は解体費の一部(上限50万円)を補助する「老朽危険空き家除却費補助金」を11年度に創設。7月末現在、制度を利用し127件の空き家が取り壊された。
 長崎市は「代執行が頻発しないために、空き家の活用や補助金を利用した解体を促すなどして、住民の安全を確保したい」としている。

行政代執行による撤去が計画されている特定空き家=長崎市香焼町

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