夏から秋へ

 通勤途中、道路そばでヒガンバナ十数本がつぼみを付けているのを見つけた。ひざ丈ぐらいに伸びた茎の先端が赤く色づいている▲突然地上に顔を出して秋の到来を告げ、まるで暦を知っているかのように、名前の通り毎年きっちり彼岸に合わせて花を咲かせる。彼岸の入りまであと5日となった▲ついこの間まで記録的な暑さにあえいでいたというのに、季節はいつの間にか巡っている。昼間強い日が差しても、気が付くと建物がつくる影がだんだん長くなってきた。風が吹けば意外なほど心地よく、夏が去りつつあることを実感できる▲スーパーの地元農産物直売コーナーでは、日照時間に恵まれて甘く育ったブドウが売り場の主役を務めている。例年なら、キュウリやナス、トマトなどの夏野菜もまだまだ出荷が続き、ブドウやナシといった秋の味覚とともに売り場をにぎやかに彩っているはずの時季だが▲猛暑による品不足で、夏野菜はずっと存在感を欠いたままだった。夏から秋への品ぞろえの移り変わりが、例年とは少し異なる今年の売り場▲本県地方では、今後しばらく最高気温30度前後の予想が続く。最低気温の予想も25度近く、平年に比べ高めで推移しそう。だが、暑さ寒さも彼岸まで。あと少し夏らしさに身を委ねながら、秋の涼やかさを待つ。(泉)

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