【平成の長崎】ハンガーで巣作り 集めました50本 平成5(1993)年

 長崎市のビルの谷間でカラスがマイホーム造りに励んでいる。建材は周辺のマンションなどから失敬してきたとみられるクリーニング店用のハンガー。基礎工事もやっと終わり、間もなく抱卵、ふ化が始まる。
 住まいは同市江戸町の県庁本館そばのクスノキ。約1カ月前から高さ十数㍍のところで巣がけが始まった。つがいが交代で運んできたのは何と青、緑、ピンクなど色とりどりのハンガーだった。その数、およそ50本。
 本館4階の県議会自民党控室から巣作りを見守っているアルバイト職員らは「マンションのベランダなどからくわえてきたのでしょう」。針金製のハンガーをくちばしで曲げたりもしていたという。
 既に堅固な外枠の建設は完了。現在は木の枝などを運んでの内装工事中。長崎バイオパーク飼育展示課は「環境が変わったため手近なところから材料を集めたのでは」とみているが、「このたくましさを人間も見倣わなくては」というのは議員たち。「七つの子」がビルの谷間から顔をのぞかせるのはもうしばらく先になりそうだ。(平成5年3月6日付長崎新聞より)
   ◇   ◇   ◇
【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

集めたハンガーで巣作りするカラス=長崎市江戸町

© 株式会社長崎新聞社