防衛省、横須賀で弾薬庫建設計画 市民団体「30年前の約束反故」

 防衛省が、神奈川県横須賀市田浦港町にある海上自衛隊の補給所を、大型弾薬庫2棟に建て替える計画を進めていることが分かった。用地を取得した30年ほど前に、同省は弾薬庫として使用しないとしていたが、弾薬類の大型化で「整備が急務」と利用計画を変更。これに対し、市民団体は「約束を反故(ほご)にしている」と反発し、従来通り、市に対し、弾薬庫と関連のない施設を維持することを政府や同省に働き掛けるよう求めている。

 市によると、補給所「比与宇(ひよう)施設」(約1万6千平方メートル)は、同省が1980年代に民間会社から用地を取得した。

 用地の近くに海自の施設が点在し、既存の弾薬庫と隣接していたことから、市は86年、同省に利用計画を照会。横浜防衛施設局(現・南関東防衛局)は「(弾薬庫との)関連はない」と回答し、用地は補給所として利用されてきた。

 ところが、昨年10月30日に、既存の倉庫を撤去し、大型弾薬庫2棟を建設すると、南関東防衛局が市に利用計画の変更を通知した。変更の理由について、同局は市側に「安全保障環境は近年、厳しさを増しており、弾道ミサイル防衛システムの導入などで弾薬類が大型化し、弾薬庫の整備が急務になった」と説明。2棟は2021年度に完成する予定という。

 これに対し、市民団体「非核市民宣言運動・ヨコスカ」など22の個人・団体が8月31日、市に要請文を提出した。

 市民団体などは、今年6月に行われた米朝会談を挙げ、「安全保障環境は緊張緩和に向かっている。防衛省の説明は根拠を失っている」と指摘。「弾薬庫の建設計画を白紙に戻し、当初の約束通り、弾薬庫とは関連のない施設のままにするよう政府、防衛省に働き掛けを」と市に求めている。

 市基地対策課は神奈川新聞の取材に対し、「(関連はないとの)防衛省の86年の回答は、市の質問に対する報告で、約束ではない」との見解を説明。「国際情勢が変わる中で、利用形態の変更は理解できる」と国側に一定の理解を示した上で、「自衛隊施設内の運用に関わることだが、市としては市民生活の安全・安心が確保されるよう(同省に)求めている」とした。

弾薬庫に建て替えられる予定の、海上自衛隊の比与宇施設(非核市民宣言運動・ヨコスカ提供)

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