『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』 世界統一入試を舞台にカンニング大作戦

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 今、アジア諸国では、少し前の日本のように受験戦争が社会問題になっているらしい。本作は、中国で実際にあった集団不正入試事件をモチーフにしたタイ映画。天才女子高生が報酬をもらって、試験中に解答を教えるカンニング大作戦を遂行する犯罪劇だ。特に、世界規模の大学統一入試“STIC”を舞台にした28分間に及ぶクライマックスは見応えがある。

 上映時間は、130分。この手の犯罪劇としては長過ぎる。90分で十分描ける内容だし、テンポを良くした方が、エンターテインメントとして面白くなるはず。だが、映画で重要なのは、そこだけではない。映画は「編集の映画」と「カットの映画」に大別でき、前者はリズムやテンポ、後者は被写体(特に俳優)とカメラの関係性が、より重要視される。実際には今の映画のほとんどが両者の要素を持っているわけだが、サスペンス重視の犯罪劇であれば、やはり速いテンポが効果的だ。

 けれども、本作の場合、監督がより大事にしているのは、ハイキーのルックからも分かるように、青春のみずみずしさや痛みの方。1シーンに28分もの時間を費やす意味は、そこにある(それでも、スローモーションの多用など無駄が多いことは確かだが)。本作はあくまでも、犯罪のサスペンスを描いた映画ではなく、犯罪を方便にした青春映画なのだ。★★★☆☆(外山真也)

監督:ナタウット・プーンピリヤ

出演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワン、ティーラドン・スパパンピンヨー

9月22日(土)から全国順次公開

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