【Ni系ステンレス冷薄市況】仕入れ値高転嫁の局面 流通、採算改善へ正念場、原料ニッケル軟化で逆風も

 ニッケル系ステンレス冷延薄板市況をめぐり、流通の市況形成力が試される局面を迎えている。足元では国内メーカーの値上げに伴う高値玉の入荷が進み、在庫単価が上昇して流通のマージンは悪化している。このため販価への転嫁を図る動きが続いており、市況は当面強含みで推移する見込みだ。一方でLMEニッケル価格が7月から軟化し、9月はポンド当たり6ドルを割っている。ニッケル系ステンレススクラップ市況も7月下旬から段階的に値下がりし、足元の原料価格指標は下向きとなっている。仲間売りの荷動きの鈍さも手伝い、地区によっては弱気も聞かれる状況であり、逆境下での販売姿勢が試されている。

 ニッケル系冷薄の内需は建材、産機、電機、設備関係など全般に堅調だ。仲間売りが活気づく状況ではないが、ヒモ付きや大手ユーザー売り、物件対応を含めれば、一定規模の売上げを見込める状況にある。市中在庫増に対して国内メーカーは実所要見合いの受注に徹する構えを強めており、輸入鋼材の動向が不安定要因ではあるものの、需給バランス改善はある程度進むとみられている。

 輸入鋼材の影響は数量・価格の両面で小さくないが、国内材では高値玉の入荷が進んで販価への転嫁は待ったなしの局面を迎えている。市況が大きく崩れることはさすがに想定しにくいが、現状の市況レベルでは流通のマージンは当分厳しい水準にとどまることが予想されるだけに、どう値上げ転嫁が進むかが見守られる。

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