大磯の「いそべぇ」おきがえ クラウドファンディング活用

 インターネットで資金提供を呼び掛けるクラウドファンディング(CF)の手法を活用する自治体が全国的に増えている。大磯町は神奈川県内の町村としては初めてこの手法を取り入れ、今月からご当地キャラクターの着ぐるみのリメーク代などを募っている。町は寄付金を集めること以上に、ノウハウの集積や、この取り組み自体を大磯のアピールにつなげることを目指している。

 町がクラウドファンディングで資金を募っているのは、ご当地キャラの「いそべぇ」。明治時代から現代にタイムスリップした町の鳥アオバトの男の子で、2011年に「ゆるキャラ」ブームに乗って誕生した。

 以来地元の人気者としてイベントに引っ張りだこ。ただ働き過ぎがたたり、すっかりくたびれてしまったという。

 そこで町は「いそべぇ おきがえプロジェクト」と銘打ち、クラウドファンディングで新しい着ぐるみと法被などの衣装の作製費用を集めることを決定。募集期間は今月3日から11月30日までとし、目標金額に到達次第締め切る。

 目標は100万円と高めだが、特典を充実させた。5千円以上の寄付者に限定グッズをプレゼント。さらに3万円以上で、いそべぇが寄付者の希望する日時と場所を訪れてお礼もする。

 クラウドファンディングは町としても初の試みで、ノウハウの集積が本来の狙いだ。町担当者は「ゆるキャラは訴求力もあり、取っ掛かりとしては無難なこともある」と説明する。

 町の人口は10年の3万3千人をピークに17年は3万1千人台まで減少。税収も17年度決算で3年連続のマイナスだ。「クラウドファンディングを新たな財源確保の手段として確立したい」(町政策課)との思いが見え隠れする。

 クラウドファンディングの手法は、鎌倉市が13年に観光案内板を取り付ける資金を募るために取り入れたのが先駆けで、全国各地に広がった。海老名市は15年に市のイメージキャラクター「えび~にゃ」像の設置費用を、平塚市は18年に天体望遠鏡の購入資金の一部を賄うために導入。記念品の作製やぜいたく品の購入を中心に行われている。

 伊勢原市は大磯町と同じく、ゆるキャラを利用して16年に初試行。人気の「クルリン」の新しい着ぐるみの作製費用約60万円のうち55万円を募った。

 キャラクターの夢を壊さないように「衣装の新調」とうたう工夫も。1カ月半で42人から寄付があり、そのうち24人が市外からの応募だった。同市の担当者は「魅力的なストーリーを打ち出せれば、広く賛同を得られることができる」と語る。

 自治体のクラウドファンディングであれば、ふるさと納税と同様に税控除も受けられることも制度活用の追い風となっている。大磯町担当者は「小さな町村では知名度も低く、壁も高いのは事実。取り組み自体が町のPRにもなってくれれば」と期待する。

 大磯町への寄付は「ふるさとチョイス ガバメントクラウドファンディング」の専用ページで。また町役場に募金箱も設置される。

“勤続疲労”から傷みなどが目立つようになり、着ぐるみが新調されることになった大磯町のゆるキャラ「いそべぇ」(左)。右は“カノジョ”の「あおみ」(大磯町提供)

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