大切な写真を洗う
平成30年7月豪雨では多くの家が浸水し、特に被害の大きかった岡山県真備町では全体の約四分の一にあたる4600棟もの家屋が浸水被害を受けた。水に浸かってしまった写真を、やむなく処分してしまった人も多かったはず。でも実は、写真は丁寧に洗浄することで復元できるのです。東日本大震災の時から活動されている写真洗浄ボランティア「課外のあらいぐま」の活動をレポートします。
主催したのは岡山県笠岡市の民間ボランティアセンターとして活動してきた「ぞうきんプロジェクト@笠岡」。同団体は、中長期支援を軸に「災害支援・アット笠岡」として活動中。9月1日・2日、北川公民館(笠岡市走出)に集合、隣の施設を使って開催された。
岡山県内のボーイスカウト39人が参加。小学2年生も作業を一緒に行った。いつもはおおよそ3人の洗浄メンバーがコツコツと行ってきた作業が、和気あいあいとした雰囲気の中、多くの作業ができた。写真は被災されたお宅を一軒一軒まわり、ボランティアさんが集めたという。
写真洗浄のやり方
1.まずは道具を用意
ほとんどのものは100円ショップなどで調達可能なものばかり
・マスク
・合成ゴム手袋(ニトリルゴム手袋)
・タライ 2個
・写真を挟み込んで並べられる台
・新聞紙
・洗濯バサミ
・無水エタノール
・ウェットティッシュ
2.写真アルバムから取り出す
写真アルバムの保護フイルムと写真が張り付いているものもあります。無理やりはがさずに、フィルムがついたままカッターで切り離します。
3.タライに水を入れ、写真の表面を洗う
バクテリアによる腐食や汚れがついてしまった部分を少しずつ洗い流します。 端から少しずつ大切な絵柄を守りながら、汚れた部分だけを洗い流すようにしてください。
4.もう一つのタライにも水を入れ、仕上げのすすぎ
5.写真の水をよく切る
写真が重なり合わないように並べていきます。ここで大切なことは、スタートとエンドの付箋を付けておくこと。どの写真アルバムのものかわからなくなってしまいます。
6.しっかり乾かす
洗濯物を干すように洗濯バサミで端を留めていきます。挟んだ跡が残らないようできるだけ端を挟みます。
7.仕上げ
ウェットティッシュにエタノールを染み込ませてください。インクのにじみを、落とします。落とし過ぎる可能性もあるので注意しながら行ってください。写真のフチや裏側に残っているカビは、後で繁殖する可能性があるのでしっかり取ってください。何より、被災を思い起こさせる痕跡を可能な限り減らすことで心理的にも大切だと思います。
8.もう一度、乾かす
新聞紙の上に並べ、エタノールが乾くのを待ちます。この時も順番がわからなくならないように付箋と共に並べておくといいでしょう。
9.新しい写真アルバムに入れておこう
せっかく綺麗になった写真です、アルバムに入れて保管しておきましょう。
「課外のあらいぐま」の福井圭一さんの想い
「濡れてしまった写真を諦めて処分してしまう人も多い。多くの写真は洗浄できるし、写真をスマートフォンなどで撮影し、データ化することも可能です。思い出の写真を諦めないで済むように活動をしていきたい」と話してくれた。
今回の洗浄ボランティアによりかなりの作業が進んだため、予定していたよりも早く笠岡の方々からお預かりした写真を手元に返すことができそうです。ゴールが見えてきて洗浄チームのメンバーも素敵な笑みが溢れていました。
「ボーイスカウトの子どもたちが、もしこのことを伝える機会があるなら1枚でも多くの思い出の写真を残せるように伝えて欲しいです。また笠岡だけでなく、多くの被災地で写真の保護活動をして回りたいとも考えている。活動を継続していくには、地域の繋がり、社会福祉協議会、ボランティアさんが一体になり、取り組むことが大切。」と話してくれた。
協力してくれるボランティアさん、支援団体、洗浄作業をしてくれるスタッフが必要です。また相談に応じてくれる地元写真店の協力もありがたいです。「すぐに乾かせば、写真は助かります」と多くの人に知ってもらい伝えてください。
災害支援・アット笠岡(旧ぞうきんプロジェクト@笠岡)さんHP
https://z-kasaoka.info/
課外のあらいぐまさんHP
http://kagaiguma.blog.jp/
被災写真の応急処置(課外のあらいぐまさんより)
http://kagaiguma.blog.jp/archives/1039838721.html
いまできること取材班
文章・撮影:小野直子 編集:松原龍之