特殊金属エクセル、高機能ステンレスを開発・量産化 世界最高の強度・延性バランス実現

 特殊金属エクセル(本社・東京都豊島区、CEO・谷口毅氏)は極めて高い強度と加工性を両立し、加工後の信頼性(疲労耐久性、破壊靭性、耐食性など)を飛躍的に高めた高機能ステンレス「TOKKIN350JIN」を開発した。1500メガパスカル超の降伏強度と25%超の伸びを両立し、強度―延性バランス(Ys×EL)は3万5千を超える。携帯通信機器の触覚デバイスに採用されている。同バランスが3万を超える鋼材はあるが、ステンレス機能材の実用化は世界初。汎用的鋼種(組成)を用いて冷延・熱処理技術を駆使して商品化に成功した。

 代表的な用途では、携帯通信機器の振動モータでヘアピン状に成形された高耐久ステンレス製ばねが組み込まれており、180度密着曲げ加工と曲げ加工部の信頼性と耐久性、1億サイクルを超える高サイクル振動時の耐疲労破壊性、高温高湿環境下での耐食性などが求められる。開発鋼はこうした厳しい仕様ニーズを高い水準で満たしている。

 開発、量産化では2014年に埼玉事業所に導入した研究開発用多機能張力付加冷間圧延機(MVM―1)を活用。準安定オーステナイト鋼を用いて、冷間圧延により加工誘起マルテンサイト相とした後、バッチ熱処理を行う「R&P(ローリング&パーティショニング)法」による量産技術を確立した。

 複雑形状の加工が可能で、加工後の熱処理(析出硬化、応力除去)が不要な特徴などを生かし、ばね、ダイヤフラムなどの用途展開を図る。

 この「ハプティックスデバイス用材料の開発」により、19日、日本金属学会秋季講演大会において技術開発賞を受賞した。

© 株式会社鉄鋼新聞社