安倍総裁3選

 自民党総裁選で安倍晋三首相が石破茂氏を大差で下して3選を決めた。事前予想通りの結果だ▲安倍1強と呼ばれて久しい自民党。実績を訴える首相に対し、石破氏は負けを承知で論戦を挑んだように見え、それなりに善戦した。だが選挙戦自体は大した盛り上がりを感じなかった▲石破氏が当初掲げたのは「正直、公正」というキャッチコピー。首相の政治姿勢との差別化を図ろうとしたのだろう。これに対し党内で首相への個人攻撃だという批判が起こった。正直や公正という言葉にけちをつけるとは狭量な▲と思っていたら、自民党はその後、総裁選を報じる新聞・通信各社に対し、公平・公正な報道を求めて内容や掲載面積などを平等にするよう異例の注文を付けてきた。党が一方的に定義した“公正”をメディアに押しつける姿勢は問題だろう▲公正という言葉に過敏な今の自民党。内外からの批判を恐れて応戦しているかのようだ。森友、加計問題などの国会審議で政権運営の在り方が問われたことを思い出す▲安倍1強の構図は当分続く。首相の在任期間は憲政史上最長となるかもしれない。今後国民が公正だと思える政権運営がなされていくのか。圧勝の後だからこそなおのこと、政権に公正という言葉がもてあそばれることのないよう注視したい。(泉)

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