ベイ後藤22日に引退試合 「最後までフルスイング」誓う

 ベイスターズの今季本拠地最終戦となる22日の中日戦は、後藤武敏内野手(38)の引退試合となる。プロ16年間で打率2割5分5厘、52本塁打、184打点をマーク。野球人生最後の試合に向け「引退を決めても試合はしっかり準備する。気持ちも普段と変わらない」と、クライマックスシリーズ出場を目指すチームの戦力となることを決意する。同じく引退する加賀繁投手(33)は21日に先発し、試合終了後に引退セレモニーが行われる。

 引退発表から一夜明けた今月11日。今季一度も1軍に招集されなかった後藤は、2軍戦を控える横須賀スタジアムで若手と共に汗を流していた。「気持ちはすごくすっきりしました」。打撃練習で黙々とバットを振り込み、強い打球をはじき返した。

 練習前のことだった。グラウンドに姿を現した後藤に、小池2軍外野守備走塁コーチが近寄って肩を抱いた。「お疲れさん!」。そう語り掛けると、言葉が続かない。2人の目は真っ赤になっていた。

 後藤が静岡の浜松シニア、小池コーチが横浜の中本牧シニアで活躍した中学時代はライバル。横浜高では共に主力として、松坂大輔(中日)と共に春夏甲子園を連覇した。選手とコーチの関係になっても、「一選手というより同級生で同じ釜の飯を食った仲間」と小池コーチ。ユニホームを脱ぐ決意を固めた後藤が真っ先に連絡したのも小池コーチだった。

 「辞めるって言うのが一番つらかったね。(2013年に)ゴジ(小池)の引退試合を見届けてから、ゴジのために1年でも長く野球を続けたいという思いもあったから」

 小池コーチにも寂寞(せきばく)の思いが込み上げる。「一番聞きたくない言葉だった。さみしい」。それでも、度重なるけがに泣かされ、2軍で苦しむ姿も見てきた。盟友に言った。「最高のスイングと後藤らしいプレー、最後に見せてよ」

 「まだできると思っていたから残念です」。横浜高では松坂世代に交じって唯一2年生のレギュラーとして二塁手で活躍し、後藤と同じ法大に進んだ松本勉さんは、引退表明の数日前、後藤と会食したという。

 その場で引退の二文字を聞くことはなかっただけに、「大学も一緒だしすごく思い入れがある。覚悟はしていたけど…」と複雑な思いだ。1998年の甲子園で一、二塁間を共に守り抜いた記憶はいまも色濃く残っている。

 スポーツメーカーに勤務し、ベイスターズにも担当する選手がいるという松本さん。22日は横浜スタジアムで先輩の勇姿を目に焼き付ける。

 バット一本で勝負し、プロ16年で52本塁打を放ってきた。背番号55は高校時代から慣れ親しんだハマスタでのラストゲームで「最後まで自分らしいフルスイングをしたい」と完全燃焼を誓う。「松坂世代」として過ごしたプロ人生を誇りに、最後の一振りに魂を込める。

ベイスターズでも豪快なバッティングでファンを魅了した=2014年10月、横浜スタジアム

© 株式会社神奈川新聞社