イルカ見ながら就寝、亡霊も現れる 今時の「大人の水族館」

By 関かおり

横浜・八景島シーパラダイスの「Good Morning! Dolphin Fantasy」

 家族連れの娯楽施設の代表格・水族館が夜は別の顔を見せる。各地の水族館で、大人をターゲットにした夜間のイベントが人気を集めている。すっかり定番となった館内でのお泊まりイベントだけでなく、水辺に出るという亡霊をテーマにしたお化け屋敷や日本酒を飲む会など企画は様々だ。イベント担当者は「ファミリーが多い通常営業の時間帯とのギャップを楽しんでほしい」と話している。

 淡くランプで照らされた水槽に、ゆったりと泳ぐイルカの影―。リクライニングシートに寝転んで頭上の水槽を眺め、一晩を過ごす大人向け企画「Good Morning! Dolphin Fantasy」が横浜市の横浜・八景島シーパラダイスで開催中だ。対象は20歳以上の女性のみ。頭上を覆う巨大なイルカの水槽を見上げながら一泊する。水槽には天井がないため、まるで海の底から空を見上げているような気分が味わえるという。参加費は12400円で、決して安くはないものの、2005年の初開催からこれまでほぼ満席となる好評ぶりだ。

サンシャイン水族館で開催される「ホラー水族館」のポスター

 癒やし系イベントだけではない。東京都豊島区のサンシャイン水族館は、ハロウィンの時期に合わせて館内をお化け屋敷に仕立てた「ホラー水族館」を開催する。16年と17年に開いたホラー水族館は大人気で、若い男女を中心に、来場者数は計5万人を記録した。お化け屋敷だからって「子供だまし」と侮るなかれ、来場者からは「本気で怖かった」「思わず悲鳴を上げてしまった」との声が上がった。水槽にお化けが浮いていたり、館内で幽霊が待ち構えていたり…。3年目となる今回のタイトルは「七人ミサキ」。水辺に現れるという亡霊がテーマだ。開催期間は9月27日~11月4日で、中学生以下の入場には高校生以上の来場者の同伴が必要。

 仙台市の仙台うみの杜水族館では来月、館内で日本酒を飲む「魚を肴に日本酒ナイト水族館」を開く。開催は3回目で、これまでの2回とも700~800人程度が来場した。被災地復興支援を目的としており、「蒼天伝」「水鳥記」など宮城県内の日本酒のほか、西日本豪雨で被害を受けた岡山県の酒も用意。各地域の特産物を使ったおつまみが振る舞われ、イワシの水槽では音楽やプロジェクションマッピングを組み合わせた演出も楽しめる。

 同水族館によると、夜行性の動物が活動している「夜の動物園」とは異なり、水族館は照明などの影響で、夜ならではの生物の姿が観察できるとは限らない。一方で、水槽を利用して光や音を使った演出がしやすい利点があり、またターゲットを大人に限定することで通常営業の時間帯とは違った雰囲気をつくることができる。集客はこれまでほぼ狙いどおりだといい、今後も継続的にイベントを開く方針だ。 (共同通信=関かおり)

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