もっての外の仕業

 その呼び名を「何とも言い得て妙」と思った覚えがある。アルコール類に、おつまみに、商品券…。深夜、公費を使ってタクシーで帰宅する国家公務員らが、運転手から金品を受けたとして処分されたのは10年前のこと。いわゆる「居酒屋タクシー」問題で、財務省などの千数百人の接待が明るみに出た▲運転手らは携帯番号を書いて職員に渡していた。ひいきにされれば、高額のチケットを切ってくれる客が楽に捕まる、と。かたや職員の方は金品を受けるのが、いつしか当たり前になっていたとされる▲この問題を境に、省庁職員が接待を受け、いい目にあうなど「もっての外」とされた-はずだが、実はそうでもないらしい。文部科学省の幹部が絡む贈収賄事件を受け、省の事務次官がきのう辞任した。贈賄側の業者から飲食接待を受けたという▲起訴された省の前幹部は、業者から高級クラブで何度も接待を受けていたとされる。10年前に表面化した公務員接待に輪を掛けて、たちが悪いと言うほかない▲昨年は天下り問題で前の事務次官が引責辞任した。省庁幹部や職員がこっそりといい目にあい、行政への信頼を地に落とす。その繰り返しである▲もっての外の行いが、当たり前になってしまったらしい。世間では、あってはならない仕業をそう呼ぶというのに。(徹)

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