歴代V70や850などの流れも汲む「王道ど真ん中のステーションワゴン」
ボルボ・カー・ジャパンは2018年9月25日、ステーションワゴンモデルの「V60」をおよそ7年ぶりにフルモデルチェンジした。V60としては2代目だが、歴代V70や850などの流れも汲む王道ど真ん中のモデルを目指し、ボディサイズも(車幅以外は!)一回り拡大。全く新たに生まれ変わっている。
ライバルにはアウディ A4アバントやメルセデス・ベンツ Cクラスステーションワゴン、BMW 3シリーズツーリングなど、いずれも強豪が揃う。そんな激戦区カテゴリーに投入される新生ボルボのウリとは。新型V60の気になる詳細について徹底的に解説する。
SUVも良いけれど・・・やはりボルボといえば”エステート”でしょ
ここのところ矢継ぎ早にニューモデルを登場させ続けるボルボは、特に新型「XC90」「XC60」「XC40」のいずれもが世界的に高評価を得て販売も極めて好調とあって、昨今ではSUVメーカーのイメージも強くなっている。
しかし60年以上に渡り「エステート」(ステーションワゴンを同社は伝統的にこう呼称する)を造り続けてきた老舗ブランドだけあって、ボルボといえばまず歴代エステートモデルの端正な姿を思い浮かべるファンも多いことだろう。
エステートと言えば、2017年に先行してラージクラスの新型「V90」「V90クロスカントリー」の日本導入を開始し、既に好評を博している。V90シリーズは、歴代エステートモデルの伝統を受け継ぐ端正さと、最新のスカンジナビアデザインが融合したエレガントな内外装。ボルボ独自で全てを一から開発した新プラットフォーム”SPA”(SCALABLE PRODUCT ARCHITECTURE)が生む新時代の走りや環境性能。そして世界最先端を行く安全性能…と、ひと言ではとても言い表せないほど多彩な美点を備える。
今回、満を持して登場したミディアムクラスの新型V60は、そんな兄貴分の良さを最大限受け継ぎつつも、よりダイナミックで、かつ実用的なボディサイズを武器に、2018年秋より日本導入を開始する。
全長は125mmも拡大し立派になったのに、車幅は15mmも縮小された理由とは
美しく、かつダイナミックなスカンジナビアンデザインは実用性にも配慮
新型ボルボ V60、まずご紹介したいのはそのボディサイズと内外装の凝ったデザインだ。
先代V60の全長×全幅×全高は4635×1865×1480mm、ホイールベースは2775mmだ。車幅はワイドながら、ミディアムクラスとしては比較的コンパクトだった初代V60。エッジの効いたフォルムと相まって、スポーツワゴンのイメージが強かった。
これに対し2代目の新型V60は全長×全幅×全高が4760×1850×1435mm、ホイールベースは2870mmとなった。
全長で125mm、ホイールベースで95mmも拡大。写真をご覧の通り、ボディデザイン自体もよりボルボエステートらしい”王道ど真ん中”なスクエアなフォルムとなった。サイズアップ以上に立派に見える点は、プレミアムモデルとして重要な要素のひとつだろう。もちろんただ四角くなったワケではなく、新世代ボルボの美点である各部の凝ったディテール処理が受け継がれている点も見逃せない。
また四角いフォルムを得たことで、室内空間が大幅に拡大出来た実利面の効能も大きい。特に後席の足元空間などは大幅に拡げられた。荷室容量も先代V60の430リットルに対し、新型V60では529リットルと、グンと広く使いやすくなっている。
XC60とも共通性を感じられる先進的でクリーンなインテリアデザインは、まずインパネ中央に位置する9インチの縦型ディスプレイが目をひく。寒い北欧生まれのV60らしく、タッチスクリーンは手袋を使用していても使える実用性の高さを誇るが、操作の多くはボイスコマンドに対応するから、走行中むやみに触れる必要はない。メーターも液晶化された12.3インチの大型ディスプレイ。さらに上位グレードではフロントウィンドウにヘッドアップディスプレイも備える。走行に必要な情報を集約しドライバーの目線に表示させることで、安全運転をサポートする。
悲願の車幅1850mmを実現させたボルボ・カー・ジャパンの執念
拡大されたボディサイズだが、いっぽうで車幅は15mm狭く、車高も45mm低くなっている。中でも注目のポイントは車幅だ。
実は都市部で多いパレット式の立体駐車場の多くが、許容の車幅を1850mm以内と指定している。先代V60の1865mmでは駐車NGとなるケースが少なからずあったという。実際にはパレットもかなり余裕を持って設計されているし、先代V60もドアノブ部の飛び出しが車幅を拡げていた(スマートキー非装着車は1845mm)から、実際には先代でも充分収まるはずだった。しかし例えば自宅マンションなどの駐車場がこれに該当する場合「保管場所使用承諾証明書」(駐車場業者などから取得する車庫証明申請用書類)が発行されず、初代購入をあきらめざるを得ないケースも生じたはずだ。
新型V60では、ボルボ・カー・ジャパンからスウェーデン本国への強い要望も功を奏し車幅1850mmを実現させた。わずか15mmの差ながら、俄然新型V60に注目するユーザーも増えるだろう。
見た目はより美しく、より立派に、しかし同時に実用性も大幅に向上と、新型V60では実に巧妙なモデルチェンジが実現された。
ガソリンと2種類のプラグインハイブリッドを用意しディーゼルは未設定
新型V60は、兄貴分のV90・S90シリーズや、SUVのXC90、XC60などとも共通するモジュラー方式の最新プラットフォームSPAを採用。先進の安全性を確保し、電動化を前提としたパワートレインレイアウトとなっている点が特長だ。
新型V60はまず直列4気筒「DRIVE-E」2リッターガソリン直噴ターボエンジンの「T5」(最高出力254ps/最大トルク350Nm)がFFモデルで日本に先行導入される。JC08モード燃費は12.9km/L。
なおXC60に用意されるD4ディーゼルターボエンジンだが、V60には設定しないとボルボ・カー・ジャパンでは説明。その分V60では2019年春納車で、2種類のプラグインハイブリッド(PHEV)モデル「T6 Twin Engine」と「T8 Twin Engine」をそれぞれ4WDとの組み合わせで導入する(予約受付は2018年9月25日より開始する)。
T6は2リッターガソリン直噴ターボ+スーパーチャージャーエンジンと前後車軸にそれぞれモーターを組み合わせ、システム最高出力はエンジン253ps+モーター87ps、システム最大トルクはエンジン350Nm+モーター240Nmとなっている。T8はそのハイパワー版で、システム最高出力318ps+87ps、システム最大トルク400Nm+240Nmを誇る。認証前のため、発表時点ではまだWLTCモード燃費などは明らかにされていない。
2019年以降、新型車では電動化モデル(EV・PHEV・48Vマイルドハイブリッド)のみのラインナップ展開とすることを宣言し、世界で話題を呼んだボルボだが、その先駆けとなる姿勢を日本ではまずV60で示した格好となった。
サスペンションはフロント:ダブルウィッシュボーン式、リアはマルチリンク式。グラスファイバー複合素材を用いたリーフスプリングの採用は他のSPAプラットフォーム同様のユニークな機構。軽量化とともに荷室容量の拡大にも寄与する点はエステートモデルにとって大きなメリットだ。
オプションでドライブモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシーを用意するが、XC60など他のモデルとは異なりエアサスペションではない。同じSPAプラットフォームのXC60や90シリーズに対しては、よりダイナミックな走りの設定だとボルボ・カー・ジャパンでは説明する。
ボルボと言えばまずは”安全”|一覧で見る先進安全・運転支援機能「INTELLISAFE」(インテリセーフ)
ボルボと言えば、なにはなくともまずは”安全”。新型V60も世界初機能を含め、その全ての先進安全装備はグレード差なく標準装備される。ミリ波レーダーと解像度を大幅に上げたカメラ技術を併用し、数々の先進安全・運転支援機能「INTELLISAFE」(インテリセーフ)が用意されている。
INTELLISAFEのラインナップはあまりにも機能が多いので、まず下記にまとめて列記する。
【ボルボ 新型V60に標準装備される先進安全・運転支援機能「INTELLISAFE」】
・City Safety(衝突回避・軽減フルオートブレーキシステム)[歩行者・サイクリスト・大型動物検知機能(夜間含む)/インターセクション・サポート(右折時対向車検知機能)/対向車対応機能/ステアリング・サポート(衝突回避支援機能)]
・オンカミング・レーン・ミディケーション(対向車線衝突回避支援機能)
・全車速追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)
・パイロット・アシスト(車線維持支援機能)
・BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)
・LCKA(レーン・チェンジ・マージ・エイド)
・LKA(レーン・キーピング・エイド)
・DAC(ドライバー・アラート・システム)
・オートブレーキ機能付CTA(クロス・トラフィック・アラート)
・RSI(ロード・サイン・インフォメーション)
・ランオフロード・プロテクション(道路逸脱事故時保護機能)/衝撃吸収機能付フロントシート
・ランオフロード・ミティゲーション(道路逸脱回避支援機能)
・被追突時警告機能(静止時オートブレーキ機能付
・フル・アクティブ・ハイビーム(LEDヘッドライト)
・リアビューカメラ
・衝突時ブレーキ保持機能
ひとつひとつの機能までとてもご紹介し切れないのが残念だが、こちらはまた後日別の記事で特集を組む予定なのでそちらも併せて参照して欲しい。
上位モデルの90シリーズや先行発売のXC60発表時のものなども含め、INTELLISAFEの多くは世界初搭載の新機能が多いのが特長だ。しかも単にカタログを賑わすための装備ではもちろんなく、リアルワールドの交通状況化での事故調査などを通じ、世界の衝突安全基準のはるか先を行く設計がなされているのが心強い。もちろん上下のヒエラルキーには関係なく、新型V60には現時点で考えうる最新機能が全て標準装備で盛り込まれているのも賞賛すべき点だ。
当初3つのパワートレインで4つグレードをラインナップ
2018年9月25日の新型V60発表時に用意されるグレードは4つ。
まずT5(2リッター直4ガソリン直噴ターボ/FF)モデルには、ベーシックな「T5 Momentum」(モメンタム/4,990,000円)と上級仕様の「T5 Inscription」(インスクリプション/5,990,000円)の2つを用意。
T5 Momentumでも最新・最先端の安全装備INTELLI SAFE(インテリセーフ)やタッチスクリーン式センターディスプレイやボイスコントロール、HDDナビやオーディオはもちろん標準装備されるし、高級車としての基本的な装備はひと通り取り揃えている。さらに望めば本革シートや電動パノラマガラスルーフのオプション設定もある。
T5 Inscriptionでは本革がさらにランクアップし、より風合いの良いパーフォレーテッド・ファインナッパレザーになる。シート自体もベンチレーション機能やマッサージ機能(前2席のみ)も備わるなど、上位のV90やXC90とも同等の高級仕立てとなる。外装も専用のフロントグリルやクロームのトリムが加わり、ホイールもMomentumの17インチ(225/50R17)に対し18インチ(235/45R18)と拡大される。内装でも流木をイメージしたドリフトウッドのパネルが備わるなど、上質感をさらに増した。オーディオもhaman/kardonプレミアムサウンド・オーディオシステム(600W・14スピーカー・サブウーファー付き)が標準装備されるほか、Bowers&Wilkns;プレミアムサウンド・オーディオシステム(1100W・15スピーカー・サブウーファー付き)もオプション選択が可能となる。なおドライブモード選択式FOUR-CアクティブパフォーマンスシャシーもT5 Inscriptionのみでオプション設定出来る。
T6 Twin Engine AWD(2リッター直4ガソリン直噴ターボ+スーパーチャージャー+PHEV/4WD)と、T8 Twin Engine AWD(高出力版2リッター直4ガソリン直噴ターボ+スーパーチャージャー+PHEV/4WD)にそれぞれ「T6 Twin Engine AWD Inscription」(7,490,000円)「T8 Twin Engine AWD Inscription」(8,190,000円)が用意される。なおPHEV2モデルについては2019年春の納車を予定している。
基本的な装備はT5 Momentumに準じるが、他のボルボPHEV車同様に、宝飾品のような美しい仕上げのオレフォス社製クリスタル・シフトノブが備わるほかパノラマ・ガラスサンルーフが標準化されるなど、装備面で一部変更がある。
なおこのあと2019年7月にはT6ツインエンジン車(PHEV)に廉価なMomentumグレードの追加も控えており、電動化モデルのラインナップはさらに拡大する予定だ。
[Text:トクダ トオル(オートックワン編集部)/Photo:島村 栄二/ボルボ・カー・ジャパン]