M7級、一斉避難求めず 南海トラフで国が段階的対応案

 南海トラフ巨大地震の警戒情報を国が発表した際の新たな防災対応を検討する政府・中央防災会議の作業部会は25日、想定より小さいマグニチュード(M)7級が起きた場合の住民避難のあり方などを議論した。深刻な被害が予想されるM8級の発生時のような津波危険地域からの一斉避難は求めず、家族との連絡手段や備蓄の再確認を呼び掛けるといった段階的な方針案が内閣府から示された。

 静岡・駿河湾から四国や九州の沖合へ延びる南海トラフでは、最大級となる全域でのM9級のほか、M8級の巨大地震が東西の領域で時間を置かずに連動し、救助活動や復旧作業に大きな支障を来す事態が懸念されている。

 4回目となったこの日の会合では、M8級に満たない大地震が起きた場合の対応を主に議論。南海トラフでは1931年~2004年にM7・0~7・5の大地震が7回起きたが、いずれもM8級を誘発しなかったため、同様のケースで一斉避難はせず、住民や企業などに地震や津波への警戒を強めて備えを点検するよう促すとともに、地域の事情に応じて自主的に避難してもらう方針を示した。世界的にみても、M7級が巨大地震につながった例は数百回に1回程度にとどまるという。

 また、警戒情報運用以前に目指していた東海地震予知の際に、巨大地震の前兆現象とみて重点観測していた地殻のゆっくりとした滑りを検知できた場合でも、備えの再確認にとどめるとの方向性を提示した。

 作業部会はこれを受け、南海トラフで起きた地震の規模や現象に応じた段階的な防災対応策を年内にも取りまとめる方針だ。会合では、「予測に基づいて避難を行うには、あらかじめ基準を定めて公開しておくことが重要」「これまでの議論は時間にある程度余裕のある津波をベースにしてきたが、地震の直後に発生する土砂災害への対応も検討すべきだ」といった意見が出された。

南海トラフ地震警戒情報時の対応を議論した中央防災会議の作業部会=内閣府

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