台風直撃で投票時間・投票日が変わる? 「早まる」「延期」などにご注意を!【沖縄県知事選】

沖縄県知事選の投票日が近づいてきました。通常の投票日である9月30日には台風24号の接近が予想されており、これにより、天候が大荒れになる可能性が高まっています。もし、この台風の被害が大きく、投票日に選挙どころではなくなってしまった場合はどうなってしまうのでしょうか? 今回はこのような不測の事態のために設けられている繰延投票の制度とその実施例について紹介します。

繰延投票

投票の締切は原則投票日の午後8時となっています。しかし、投票所が20時より早く閉まるなど、締切が前倒しされるケースは良く見られます。これは公職選挙法第40条で、選挙管理委員会の判断により、投票所の終了時刻を4時間以内の範囲で繰り上げることができることが規定されている他、第56条では離島などの交通不便の土地では、投票日自体を繰り上げることができることが規定されています。例えば、東京都の母島では、昨年行われたの衆議院選の投票日は全国よりも1日早い10月21日となっていました。また、今回の沖縄県知事選でも竹富町の全て投票所とうるま市の津堅島の投票所の投票日が9月27日に繰り上げになりました。

一方で投票の締切が延びるという事例はまず耳にしません。しかし、公職選挙法第57条には以下に示すような繰延投票の規定があります。

天災その他避けることのできない事故により、投票所において、投票を行うことができないとき、又は更に投票を行う必要があるときは、都道府県の選挙管理委員会(市町村の議会の議員又は長の選挙については、市町村の選挙管理委員会)は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない。この場合において、当該選挙管理委員会は、直ちにその旨を告示するとともに、更に定めた期日を少なくとも二日前に告示しなければならない。

つまり、何か災害などが発生し、予定していた投票日に投票ができない、あるいはさらに別の日に投票を行う必要があると選挙管理委員会が判断した場合、投票日を予定より後の日に設定することができるというものです。

繰延投票が実施された事例

このような繰延投票はごくまれに起きます。最近では2012年8月に台風15号のため、鹿児島県の沖永良部島の和泊町と知名町、与論島の与論町の各議会選と沖縄県の竹富町長選の投票日が1週間延期された事例や、2014年10月に台風19号のため、沖縄県の豊見城市長選の投票日が1週間延期された事例があります。

繰延投票の実施例は、鹿児島や沖縄において台風が理由で延期されているケースが大半ですが、珍しい所では2010年の青森県のおいらせ町長選があります。この選挙では、チリで大地震が発生し、町に大津波警報が発令されたため、避難指示が出た地域の投票が延期されました。

繰延投票が実施された場合、延期期間中も選挙運動を行うことができることになっています。このため、前述した竹富町長選では通常の選挙期間では10の有人島から構成される町内を回りつくすことができないため、「めぐみの台風」とコメントした陣営があったほどです。

今まで紹介した事例は地方選挙ですが、国政選挙でも繰延投票の実施例は戦後において3例あり、これらはいずれも参議院選で起きています。最初の例は1947年の第1回参議院選のときで、長野県飯田市で投票日当日に大火が発生し、市内の投票所が焼失したため、1週間延期されました。2例目は1965年で、この時は熊本県の五木村全てと坂本村の大部分において、豪雨を理由に1週間延期されました。そして、現時点で最後の例は1974年のときで、三重県の伊勢市の一部と御薗村全てにおいて、こちらも豪雨を理由に1週間延期されました。

国政選挙の3例

この国政選挙の3例ですが、いずれも白熱した延長戦が展開されました。

1例目である1947年参議院選の飯田市の事例ですが、このとき、繰延投票の対象となった有権者数は2万人弱となっていました。長野県選挙区ではこの票の行方によって、結果に影響を与えることはありませんでしたが、全国すべてを選挙区とする全国区には影響を与える可能性がありました。

通常、参議院選は定数の半分ずつを改選することになっていますが、第1回の選挙では全議席分を選出し、順位に応じて、上位当選者と下位当選者に分けるという形式をとっていました。そして、上位は本来の任期である6年、下位の任期は第2回参議院選までの3年となっていました。このときの全国区の選出数は100となっていましたが、上位50人は6年、下位50人の任期は3年となっていました。このため、50位前後と100位前後の候補者が焼け跡となった飯田市に殺到して、選挙運動を展開しました。なお、このような選挙運動が行われたものの、次点候補の逆転や「6年議員」と「3年議員」の逆転は起きませんでした。

次に1965年参議院選の時ですが、このときも全国区で激しい延長戦が行われています。このときの全国区の改選数は52で、50位までの任期は6年でしたが、51、52位は補充で任期が3年となっていました。このため、この時点で50位から52位であった候補者3人が、全国区の候補者自身が姿を見せて選挙運動をするようなことがまずありえなかったような村に選挙事務所を開設し、激しい選挙戦を展開しました(53位の候補者は差が付いていたため、選挙運動をあきらめています)。最終的に51位と52位の候補者で逆転が起きたものの、このときも次点候補の逆転や「6年議員」と「3年議員」の逆転は起きませんでした。

また、1974年の参議院選も以前の2例と同様の事態が起きています。このときの全国区の改選数は54で、51-54位は補充のため、任期は3年となっていました。このときの延長戦は1965年より白熱し、候補者が8人も選挙事務所を対象地域に開設しました。そして、各政党が組織立った選挙を展開し、延べ数千人が動員された激しい選挙戦となりました。なお、このときも次点候補の逆転や「6年議員」と「3年議員」の逆転は起きませんでした。

今回はどうなる?

冒頭でも触れた通り、竹富町の全て投票所とうるま市の津堅島では27日への繰り上げ投票が決まっています。また、特別警報の発令などの場合によっては、10月1日以降の繰り延べ投票も検討されるようです。

雨などの天候になると投票に行くのも面倒に感じてしまいますが、1票を無駄にすることなく、ぜひ投票に行ってくださいね!心配な方はお住いの地域の選挙管理委員会にお問い合わせください。

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