米国の有力紙、ニューヨーク・タイムズのニコラス・クリストフ東京支局長が8月8日、長崎市坂本1丁目の県被爆者手帳友の会(深堀勝一会長)事務所を訪れ、被爆者の生の声を取材した。
原爆被害の実態や被爆者を取り巻く環境について取材中の同支局長は広島市での取材を経て8月6日午後に長崎入り。
深堀会長ら友の会の被爆者9人に対し、被爆当時、最も印象に残った体験、次世代への継承活動などを重点的に取材。「被爆者に対する差別や偏見はあったか」「子供や孫に体験を話すことはあるか」「あまり話そうとしなかったのはなぜか」などを聞いた。
会員たちは結婚、出産時に味わった被爆者に対する偏見や悲惨な記憶を忘れるため長い間、口を閉ざしてきた、と心情を語った。深堀会長は「原爆被害の実態を1人でも多くのアメリカ人に伝えてほしい」と要望した。
取材後、同支局長は「被爆者が体験をあまり話したがらない事実を多くの米国人は知らないと思う」と語り、スミソニアン航空宇宙博物館の原爆展をめぐる論争については「米国人の中にあまりにも多くの意見が出て、同意できる部分が少なかったため<エノラ・ゲイが原爆を投下した>という1点だけを示す展示になった」との考えを示した。
(平成7年8月9日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】ニューヨーク・タイムズが被爆者を取材 平成7(1995)年
- Published
- 2018/10/06 00:00 (JST)
- Updated
- 2018/12/11 12:28 (JST)
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