極彩色の風 和華蘭 長崎くんち・2 大黒町・唐人船 エネルギッシュな風と波

 初夏の南西の風に乗って「さあ、これからひともうけするぞ」と期待に胸を膨らませ、長崎に入港していた唐人船。踊(おどり)馬場に入ってくる根曳(ねびき)たちが、中国・福建省の民謡「劃龍船(パァー・ロン・ソン)」を声高らかに響かせる新たな演出で、物語の幕が開く。
 「劃龍船」は、譜面が数字で書かれた古い民謡集の一曲。世界平和と人生の希望をうたう。采振(さいふり)長の藤原祥司さん(50)が、民謡集の50~60曲を1年がかりで五線譜に直して音楽ソフトで聞き比べ。勇壮な同曲を選び、発音も当時の方言になるべく近づけた。
 藤原さんは「大黒町と中国、華僑の方との関係は特別。日中平和友好条約締結40周年にふさわしい奉納をしたい」と力を込める。
 銅鑼(どら)の音で酔いつぶれた船員を奮い立たせる囃子(はやし)「奮迅鼓(ふんじんこ)」の披露の後は、出港の情景を表す船回し。「見どころは前回よりスピーディーな3回転半。4トン近い船をこんなに速く回せるんだと見せつけたい」と根曳の古田翼さん(27)。根曳は荒々しい波と化し、命がけの航海を描く。
 招福を意味する「ヤーハッ」の掛け声と、心を鼓舞する唐楽拍子。エネルギッシュな唐人船が長崎の街に熱い風波を起こす。

前を見据え、高らかに歌う大黒町の根曳衆=長崎市上西山町、諏訪神社

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