ファイザー医学記事賞に本紙「時代の正体」

 優れた医療記事を表彰する「第37回ファイザー医学記事賞」の優秀賞に、本紙特報面の長期シリーズ「時代の正体」が選ばれた。対象は津久井やまゆり園事件と横浜市立北綱島特別支援学校再編問題をテーマにした2017年度の計20本で、成田洋樹(43)、草山歩(29)の両記者が担当した。本紙の受賞は1982年の第1回以来、2度目。

 やまゆり園事件の記事では、障害者差別の風潮に抗(あらが)う人たちの姿を伝え、重度障害者の暮らしの場を巡ることで「入所施設か地域での生活か」で議論を呼んだ同園建て替え問題を掘り下げて検証した。

 たんの吸引などの医療的ケアが必要な重度障害の子が多く通う同支援学校の再編問題に関する記事では、横浜市教育委員会が保護者や学校現場の意に反して分校化案を推し進め、市も市会も追認した実態を通じて教育行政や民主主義の在り方を探った。

 28日に都内で開かれた贈呈式で成田記者は「障害者差別はこの社会に広く浸透している。共生社会とは何かについて考え続けていきたい」と語った。

 審査員でエッセイストの岸本葉子さんは「衝撃的事件を私たちの問題として感じさせる力があった。一回一回の記事に重量感があり、それは取材のたまものだと感じた」と講評。日本医師会常任理事の城守国斗さんは「多角的視点から読者に考えさせる情報を提供していて高く評価した」と受賞理由を解説した。一次審査に当たった厚生科学研究所社長の吉野晶雄さんは「障害者差別について感動的な記事を掲載し、県紙としての責任を果たした」と評価した。

 そのほかの受賞記事は次の通り。

【大賞】「つながりなおす 依存症社会」(信濃毎日新聞)【優秀賞】「共助の地図 障害者と考える震災ハザード」(高知新聞)、「ともに生きる 認知症700万人の時代」(徳島新聞)、「認知症と司法」(毎日新聞)、「精神障害とともに」(南日本新聞)

表彰状を受け取る成田記者=都内

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