寺社建立の技、宮大工道具で伝え 伊勢原で展示

 大山の中腹に立つ大山寺などを手掛けた宮大工、手中(てなか)明王太郎(みょうおうたろう)の大工道具20点あまりが、伊勢原市西富岡の旧堀江邸で開催中の文化財フェスタ(伊勢原歴史文化遺産活用実行委員会主催)で展示されている。

 市教育委員会などによると、手中明王太郎は奈良時代の755(天平勝宝7)年に僧良弁(ろうべん)によって開かれたと伝えられる大山寺の宮大工。代々の当主が手中明王太郎を名乗り、90代あまり続いている。宮大工の仕事は昭和の初めに廃業したという。

 大山寺、大山阿夫利神社下社正殿など市内の建物ののほか厚木、秦野、横浜市内など広範囲の寺社も長期間にわたって手掛けた。携わった建築関係資料などは市指定文化財となっている。市教委が手中明王太郎の大工道具を専門家に委託して調査し、全体像が把握できたことから今回、初めて展示した。

 会場には主に明治以降に使われたのこぎりやかんな、のみなどが並ぶ。道具を調査した元東京農業大学准教授の星野欣也さんが、鉄くぎを打ち込む穴を開ける長さ40~50センチもある長いのみや、太い材木を切る大きなのこぎり「大鋸(おが)」などを手にとって解説。「大鋸でひいて出た木くずだから、『おがくず』と言います」などと説明すると、来場者は「なるほど」とうなずきながら聞き入っていた。展示は30日まで。

長いのみを手にとって説明する星野欣也さん(右)の話を聞く来場者ら=伊勢原市西富岡

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